「戦時体制」を敷く諸外国では、ドライブスルーでのワクチン接種が行われている
「戦時体制」を敷く諸外国では、ドライブスルーでのワクチン接種が行われている Photo:Guillermo Legaria/gettyimages

 日本では今、新型コロナウイルスの感染者が急増しており、大騒ぎだ。

 しかし、国民100万人当たりの新型コロナによる死亡者数は、現時点で米国1740人に対し、日本はたったの82人。日本の状況は諸外国と比べて悪いようには見えないというのが、世界の大方の意見ではないだろうか。

 だが、コロナ後へ向けた準備という点で、日本は心配だ。新型コロナは感染症なので、感染が終息して平時に戻るには、人口の6~7割に免疫が備わらないといけないといわれている。この集団免疫をもたらすのは、自然感染とワクチンのどちらかしかない。

 自然感染とは、感染予防をせず、自然に感染が広がることにより免疫を広げる方法だが、多くの犠牲を伴う。約100年前のスペイン風邪では、世界で5000万人以上が死亡したといわれているから、現在では死者数は2億人を優に超えるだろう。だから、選択肢がワクチンしかないことは明らかだ。

 しかし、日本のワクチンに対する動きを見ていると、非常にもどかしい。世界各国のワクチン接種率で日本は118番目と大きく出遅れている(100人当たりの接種回数。「日本経済新聞」5月3日付)。これは、ワクチンの確保に失敗した政治的な失策だったのかもしれないが、ここでは触れない。

 むしろ強く印象付けられたのは、世界の国々が疫病流行と闘う“戦時体制”に移行した中で、日本は平時体制のままに見えることだ。