介護テレワーカーが注意すべきポイントは、これだけではない。パーソル総合研究所の調査データによれば、コロナ禍後の介護テレワーカーは、「労働時間が長くなる」「腰痛・肩こりの悪化」「スペースがない」といった困りごとを、介護のないテレワーカーよりもかなり高く感じている。

 さらに、「公正に評価されるかが不安」といったキャリアへの不安感や、「さぼっていると思われていないか」といった不安感が高いことも同時に確認できた。これは、「介護と仕事の両立」ができている状況からはほど遠い。

テレワーク頻度と介護している確率出所:パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」
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テレワークによって介護者が苦しい状況に…
「負のループ」をどう脱するか

 問題は、こうした状況にもかかわらず、社会において「テレワークならば介護との両立もしやすくなる」という教科書的な理解がなされていることだ。介護する部下を抱える上司や会社側がこうした前提を持っていれば、テレワークで「一見両立できている」ということに安心しサポートの手をゆるめてしまったり、「どんどんテレワークしていいから」と、さらに介護者を家庭に閉じ込めてしまうようなアドバイスをしてしまったりする。

 しかし、介護というのは、終わりの見えない、中長期的な営みである。家族や子どもが介護すればするほど状態が良くなるというわけでもない。むしろ、だんだんと進む認知症などの症状に、介護の手間は増大し続ける。そして、それらを「自分でできる」「自分がやらなくてはならない」などと、周りを頼らない癖をつけてしまうことによって介護離職のリスクが高まる。

 介護離職を防ぐには、専門家である介護士やケアマネジャー(介護支援専門員)、地域包括支援センター、親戚や近所の知人といった周囲にある支援のリソースを動員し、ネットワークをいかに構築できるかが鍵となることが、専門家から指摘されている。それにもかかわらず、テレワークは「自分の手でできること」を無制限に広げてしまいかねないのだ。

 企業や上司の「テレワークできれば、以前より両立できるだろう」という意識、介護者側の「そばにいたいから介護してあげたい」という意識が、いわば共犯的に、介護者が中長期に介護に追い詰められてしまうリスクを高めてしまう。換言すれば、テレワークによって高まる「介護と仕事の両立可能性」が、回り回って「両立可能性を下げてしまう」という逆機能を持ってしまうということだ。