また、巣ごもり需要によって家で食べやすい箱入りの商品の売れ行きが伸びるなど、新たに見え始めていた変化もあった。買収したスカイフーズは一口アイスの製造を得意とする。こうした強みも、新商品の開発や製造に役立てられるのではないかと考えた。

 新たな製造拠点を足掛かりとして、竹下製菓は関東での販売網を拡大していく方針だ。

 九州では誰もが知る商品であるブラックモンブランだが、それ以外の地域では販売されている店舗は限られている。九州出身者から、「食べたいけれど自分の住むところでは売っていない」といった声も届いていたという。

 そんな声に応えようとインターネット販売の環境も整えたが、保冷が必要なアイスという商品の性質上、どうしても発送料が高くなる。手頃な価格の商品であるため、そのメリットがネット販売では生かしきれないという課題があった。

 そうした中で、販売する地域に近い場所に生産拠点があれば、販売店を増やすための営業活動はしやすい。商品の流通にかかるコストも抑えられる。

厳しい戦いを勝ち抜く
商品の強みとは?

 ただ、全国区で勝ち残っていくためには、大手メーカーが手掛ける人気商品がライバルになる。ブラックモンブランは、どのように消費者の関心を引き付けていくのか。

 竹下氏は、「積み重ねてきた歴史」が強みになると考えている。50年超続いてきた商品だからこそ、九州で育った人たちにとっての思い出の味となった。この歴史は一朝一夕には作れない。

 またブラックモンブランが九州地方で長年愛される商品となった背景には、「くじ付き」アイスだったことが大きいようだ。

「初めは、駄菓子屋などの店舗と消費者とのコミュニケーションツールとして、くじを付けたと聞いています。今でも『小さい頃、当たりくじを必死に探した』『こういうパッケージが当たりだといううわさがあった』など、お客さまにはくじに関するエピソードを語っていただくことが多いんです。味とともに思い出にも残ってくれているんだなと感じています」(竹下氏)