日本の建築設計事務所の上海支社に勤める桑村誠二さん(仮名、男性、50代)は、4月初旬に1度目のワクチン接種を受けたという。

「1回目のワクチンを接種したときには、欧米人が多くて日本人は少なかった。2回目のときは周りが日本人ばかりだった。接種した場所では、英語や日本語のできるボランティアがいて、どこに並ぶかなど、詳しく案内してくれた。そういう面では大変安心できた」

ワクチン接種の状況を示すアプリの画面ワクチン接種の状況を示すアプリの画面
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 また、桑村さんは2回目の接種が終わった後、ワクチン接種完了の証明書が医療機関から発行されたと話す。

「証明書は紙で発行される以外に、『健康碼』という個人の健康情報アプリ上でも、ワクチン接種済みということが反映されるようになっている。『ワクチンパスポート』を手に入れたような感じで、まずは一安心」

ワクチンを接種しようと
思ったきっかけは?

 一方で、中国のワクチンについては、海外からその有効性に懐疑的な意見も出ている。そうした中で、ワクチン接種に不安はなかったのか。

 上海で10年ほどインテリアデザイン関係の仕事をしているフリーランスの井戸直美さん(仮名、女性、40代)は、次のように心境を明かしてくれた。

「受けるかどうか、最初はかなり迷った。特に安全性や副反応については不安だった。ただ、そう思いながらも日本人向けの情報誌や中国の専門家によるワクチン関連の記事を読むと、受けたいと思うようになった。

 特に、中国でその名を知らない人がいない、復旦大学付属華山医院感染科主任の張文宏教授によるワクチンについての説明を読んで、受けてみようと思った。この先生が言うなら、絶対に大丈夫だと決心した」

 張文宏教授とは、昨年の新型コロナウイルス感染拡大初期から、コロナに関する正しい知識や感染防止方法などについて発信を続けてきた感染症の専門家だ。政府に同調せず、市民の立場に立った「正直な発言」をする専門家として一躍有名人となり、中国国内で絶大な支持を得ている。発信力も高く、政府の意向に左右されない彼の意見を多くの国民が信用しているという。コロナ禍の日本にもこのような人物が必要だと筆者は思う。

 そんな彼は直近で「コロナをゼロにすることは、もはや不可能だ。そのために、一日も早くワクチンを接種することがとても大事だ」と主張しており、井戸さんにとっても彼の見解が接種する上での判断材料になったようだ。