いぶし銀の感性を世界に広めたい

「NYをニッカポッカ姿で歩くんだ!」、瓦の魅力を世界に伝える山梨企業NYを闊歩する社員 写真提供:一ノ瀬工業(以下同)

 日本からどんどん瓦屋根が失われていく中で、飛鳥時代から1400年以上続く瓦文化を世界に広げようとする男がいる。山梨県に本社を置く一ノ瀬瓦工業5代目社長の一ノ瀬靖博(45歳)である。

 「海外で瓦から“KAWARA”と共通語で呼ばれるようになるのが、一つの目標です。海外で瓦ぶきの仕事をするようになり、アメリカの関係者がそれまでルーフ(屋根)タイルと呼んでいたのをKAWARAと言ってもらえるようになったのが第一歩で、今後は“いぶし銀”を美しく感じる日本の文化や感性とともに瓦を世界に広めたいと思っています」と、一ノ瀬は胸を張って力強く語る。

 一ノ瀬は2015年にアメリカの名門イェール大学で茶室を建てるプロジェクトに参加して、瓦をふいたのを皮切りに、海外に瓦屋根を「輸出」し続けている。

 さらに、16年には社内にプロダクト事業部を設立、「icci(イッチ) KAWARA PRODUCTS」(icciは一ノ瀬のイチ)というブランドを立ち上げて、瓦を素材としたカップ、置物、コーヒー用ドリッパーなどを次々と企画・製品化。国内のみならず、台湾、香港などにも販売した。まだまだ金額としては大きくないものの、瓦の新たな展開を生む試みとして業界でも注目されている。

「NYをニッカポッカ姿で歩くんだ!」、瓦の魅力を世界に伝える山梨企業一ノ瀬社長

 「いぶし銀という不思議な色合いは表に出過ぎず、下がり過ぎず、でも存在感がある。まさに日本人らしさを表した洗練された色みです。外国人にとっては未知な瓦の魅力をどのように伝えるか、いろいろと悩み苦労しましたが、それが楽しいし、いい勉強になっています」と一ノ瀬は言う。

 昔の瓦の製法は粘土を焼き上げ、松葉を入れて密閉し、無酸素状態の中で発生した大量の煙によって色合いを出す。まさにいぶしの効果なのだ。煙が少しずつ瓦に吸収され、炭素の結晶が表面に薄い膜を作ることでいぶし銀に発色すると同時に耐久性も増す。日本人の知恵のかたまりだ。


 そのため、一ノ瀬瓦工業の企業ロゴは「松葉を2本合わせた中に一ノ瀬の一の字」で表されている。

 実は日本人にとっても瓦はすでになじみのない文化になりつつあり、製法を知る人も少ない。未知なのは外国人に限らない。