外国人生活保護と就労の
密接な関係とは

 生活保護の対象となる外国人の在留資格は、「永住者」「定住者」「永住者の配偶者等」「日本人の配偶者等」「特別永住者(在日韓国人、在日朝鮮人、在日台湾人)」の5種類に限定されている。しかも、日本人に対するのと同じ生存権保障ではなく、国際的な道義と人道の見地から「同様の制度を準用する」という形だ。「日本に住めば、外国人でも日本人と同等の人権が保障される」というわけではない。

 準用する在留資格が前述の5種類に限定されているのは、日本人と同じ意味で「働ける」資格であるからだ。「外交」「芸能」「技能実習」などの資格で日本に在留している場合、その職種で働くことが前提であるため対象外。留学や観光のために日本に在留している場合には、日本で働かないことが前提なので対象外。もちろん、日本で合法的に働くことができない不法滞在者は対象外。仮放免中のBさんの場合も同様だ。

 日本人の場合、生活に困窮すれば生活保護を利用できる。申請時点では、「働ける」「働けない」「働かない」は問題にならない建前だ。しかし、日本で生活保護の利用が認められている5つの滞在資格の外国人の場合、考え方としては「働けないから生活保護」なのである。それ以外の滞在資格の外国人は、「働けないから生活保護もダメ」。不法滞在者の場合、「日本にいられず働けないはずだから生活保護はダメ」。仮放免中の場合も「本来は日本にいられず働けないはずだから生活保護はダメ」なのだ。

誰かが病むのを放置すれば
その社会が病んでいく

 外国人と生活保護に関する前述の原則は、病気や負傷の時に生活保護の医療費補助(医療扶助)だけを適用する医療単給にも適用される。

 生活保護の利用資格がない外国人には、「一時的に医療費だけ生活保護」という選択肢もない。そして、その人々の健康が損なわれるとき、日本社会の健康が同時に損なわれる。新型コロナウイルスも、人を国籍や在留資格で区別しない。

 最新のデータがそろっている2019年、日本全体での生活保護世帯が約164万世帯であったのに対し、外国人が世帯主の世帯(日本人の世帯員を含む)は約4万6000世帯に過ぎなかった。「外国人が多すぎる」「日本人が迷惑している」と示す事実は、どこにもない。むしろ、厳しすぎる弊害の方が大きくなっているのかもしれない。

 ともあれ、今国会での入管法改正は見送られた。一説によれば、理由は「憲法改正国民投票法をなんとしても成立させるため」。そちらも、生活保護制度をはじめとする日本人の生存に大きく影響しそうだ。

 Bさんは、入管法改正の見送りを受けて、このように語る。

「これで終わりというわけではありません。毎年のように入管の収容施設で死者が出る制度が変わるように、日本国民の方々の力、メディアの関心が必要です。良い意味で『日本らしい』入管に変わってほしいと思います」(Bさん)

 この「重い」願いを、日本国籍を持つ人々が受け止めないわけにはいかないだろう。

(フリーランス・ライター みわよしこ)