医療的ケア児の生活は
日本社会の質を問う試金石

 自由民主党・野田聖子衆議院議員(60歳)も、医療的ケア児の真輝(まさき)君(10歳)を育てる。真輝君は呼吸器障害や知的障害があるほか、胃ろうから栄養を摂取している。

「医療的ケア児」を社会で育てる法案の成立が待ち望まれる窮状野田聖子議員と息子で医療的ケア児の真輝君(写真提供:野田聖子さん)

 野田議員は妊娠4カ月目で胎児に数多くの障害があることを知ったが、真輝君を生むことに「ためらいはなかった」と言う。

 真輝君は生まれてすぐ人工呼吸器を装着し、検査で気管、食道、心臓、胃、肝臓などに障害が見つかった。さらに、9カ月目には脳梗塞を起こし、右半身麻痺となった。2歳3カ月までに、十数回の外科手術を受けた。退院時は話すこともできず、医師からは「寝たきりのまま、人生を過ごすだろう」と言われた。

 だが、真輝君は「子どもには親の想像を超えたポテンシャルがある」と野田議員も主治医も驚くほどの成長ぶりを見せる。父親が30種類もの食材を大鍋で煮込んで作るミキサー食のおかげで体力がつき、日々の練習が功を奏して歩けるようになっただけでなく、走ったり、自転車に乗ったりすることもできるようになった。いまは一人で歩いて、地域の小学校の特別支援学級へ通う。

「体幹が安定しないので、ゆっくりとぎごちない歩き方で、転んでしまうこともあります。それでも、最近は自力で起き上がることもできるようになってきました」と野田議員は言う。 

 医療的ケア児を育てる親は、社会の偏見や制度の壁に阻まれ、いろいろなことで悩み苦しんでいる人が多い。野田議員も子育てで悩んできたという。「私のように修羅場をくぐってきていても、気持ちがふさぎこんでしまうこともあります。障害児との暮らしは、つらくて当たり前です」と言う。

「でも、前を向くためにはどうしたら、なんて考える余裕はないです。彼(真輝君)と向き合うときは悩んでいられない。クヨクヨする時間を作ってくれない。一日一日、懸命に生きている。みんな、そうだと思います」と野田議員は言葉を続ける。

 そんな医療的ケア児はどんな存在か。

 野田議員は「日本の社会の質、医療・障害福祉・教育の質が高いという証し」と確信を持って言う。

「医療的ケアを必要とすることから、死にゆく終末期医療のイメージを持たれている方が多いようですが、息子は成長しています。息子と家族、周囲の人々との間に化学反応が起こることもあるんですよ。そのとき、社会とのギャップがあれば、それを埋めるのが法律です」と話す。