それに代えて、米韓の共同声明では中国に関連し、「韓国と米国は、規範に基づいた国際秩序を阻害したり、不安定にしたり、脅かしたりするすべての行為に反対する」として、秩序を乱す主体を明示しないで迂回(うかい)的に中国の行動を批判する形となった。台湾問題は明示し、南シナ海の平和と安定も強調した。これは米国が中韓間にくさびを打ち込んだものである。

 中国は、共同声明に懸念を表明し、「台湾問題は内政干渉であり」「いかなる外部勢力の干渉も容認しない」「台湾問題では火遊びをしないように促す」との外交部の見解を表明した。

 文政権は帰国すると中国に対する説明と言い訳に終始した。日米共同声明との違いを説明し、中国側の理解を得ようとしている。

 韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相は、「朝鮮半島問題を平和的方法で解決すべきという原則と、両岸関係の問題も平和的に解決すべきという原則は同じ性格」と述べるとともに、「韓国政府は『一つの中国』の原則を確実に維持しながら、韓米同盟と韓中間の戦略的パートナーシップ間の調和を取りながら発展させていくという基本原則を持っている」と述べた。中国に寄り添った形である。

 また、外交部の崔鍾建(チェ・ジョンゴン)第1次官は「中国を露骨に名指ししなかった」点を強調して事態の鎮静化に乗り出した。

 大統領府関係者は中国とは「常時協議が行われている」「中国も韓国が直面した立場を理解する姿勢を示している」とし、外交チャンネルを通じた“公式協議”はなかったと主張している。

 鄭義溶外相が台湾の対岸の厦門で中国の王毅外相と会談したのが4月3日である。それから1カ月ほどしかたたないうちに、米韓の共同声明に台湾海峡を盛り込んだ。帰国するや否や、中国の暗黙の圧力に屈して、米国とまとめた共同声明の内容を薄めることは韓国にとって信頼性を失わせるもとになる。

中国の対韓姿勢は
どう変化するのか

 中国の今後の対韓姿勢を占う上で重要な機会は、習近平国家主席の訪韓であろう。文大統領は「コロナが落ち着いたら進めたい」と意欲を示したが、まだ日程など具体的なことは何も決まっていないようである。

 習主席は、米国に歩み寄った韓国への嫌がらせとして、自らの訪韓をうやむやにするのか。