あるいは中国の強権体質については、欧州各国も懸念を強めており、英国が空母「クイーン・エリザベス」を年内に日本に派遣するなど、国際社会の多くが中国包囲網を強めている。そうした包囲網突破のために、中国が韓国を取り組もうとするのか。

 中国の出方が注目される。

半導体供給網の構築などの合意で
米韓同盟の幅が広がった

 米韓両首脳は半導体などの先端技術分野におけるサプライチェーンの構築などの産業協力に合意した。

 これを受け、兪英敏(ユ・ヨンミン)青瓦台秘書室長は、後続措置の点検と推進のために青瓦台タスクフォース(TF)を運営することにしたと報告した。

 韓国はファーウェイの問題で米国から、米中どちらを取るのか態度を鮮明にするよう求められたとき、韓国政府は企業に対応を丸投げし、方針を示さなかった。今回、財界人を同伴し、最先端分野に多額の投資を行うこととし、それを韓国政府もバックアップする体制を構築するというのは一定の前進である。

 しかし、「5G」など米国が中国と競合する先端技術分野で韓米が協力強化で一致したことを巡り、中国が不満を示しかねないとの指摘に対し、文勝ウク(ムン・スンウク)産業通商資源相は「中国は韓国の輸出の最大市場、重要な経済パートナーであり、企業も対中投資を続けていく」と述べ、中国への配慮も示した。

 韓国にとって、中国の経済的影響が大きくなりすぎており、これを分散させることは、中国リスクを軽減する上で必須である。また、財界にしてみれば、韓国内の各種規制が大きく米国に投資することにメリットは大きい。

 韓国経済の転換を図る良い機会になるはずである。この際、政治的考慮ではなく、あくまでも経済的判断で進めていくことが重要であろう。

韓国軍へのワクチン提供は
米韓合同軍事演習実施の条件作り

 会談を通じて、米国が対北朝鮮政策で韓国の立場を理解したと感じたことが文大統領の言動から読み取れる。

 共同声明では、「北朝鮮と外交を通じて緊張緩和のための現実的な措置を取るという考えで一致した」と述べ、「2018年の(南北首脳による)板門店宣言と(米朝首脳による)シンガポール共同声明など南北・米朝の約束に基づく対話が朝鮮半島の完全な非核化に欠かせないことを再確認した」と記している。