このとき必要になるのは、意思決定者のガマン、です。意思決定者が途中で口を出せば、参加者はすぐに察知します。

「ああ、リーダーはこっちの方向に持っていきたいんだな」

 だから、傾聴のガマンが必要です。しょうもない(と感じる)意見にも耳を傾け、かつとりあえずは黙って反論しないガマンが。

『重要思考』での議論力アップのために

 これら5つの議論ルールを守るために、議長役かファシリテーターが必要だと書きました。でもそれは、本当はウソ(というよりムリ)です。

 もちろんそんなヒトがいたら、それに越したことはありません。日産自動車では、プロジェクトや議論の効率化のために、ファシリテーター養成だけでなく、専任の支援者組織を立ち上げました。プロジェクトや議論の進め方を、社内のプロが手伝ってくれるのです。

 でもふつうはそんなヒトも組織も望めません。

 だから、強いファシリテーター頼み(ないものねだり)ではなく、参加者個々人が自然とできるようになっていかなくてはならないのです。

 まずは、自分のチーム内で始めましょう。『重要思考』による議論を。

 決めるための会議、意思決定のためのミーティングであれば、この5つのルールをすぐに使ってみましょう。週替りでファシリテーター役を決めて、みんなが経験しましょう。

 そして、こういうやり方にチームのみなが慣れることです。

『重要思考』議論に慣れてくると、勝手に発言し勝手にテーマを変えていくのが気持ち悪くなります。隙間が空いたら間髪入れずに発言することが、議論のジャマだとわかります。細かいことにだけ突っ込むことが、虚しくなってきます。

 そう、これらは「慣れ」の問題なのです。難しくはありません。繰り返すことですぐ慣れます。

 逃げずに、頑張りましょう。