社長の清水氏は山形出身、高橋氏も父親が山形出身だ。その後も、山形出身の料理人をスカウトするなど、徐々に山形料理をメインにし始めた。

「郷土料理ってある意味、楽なんです。例えば山形なら日本酒やワインなどの地酒が有名。地酒にはやっぱり地元の食材と料理が一番合うので、自動的にメニューや組み合わせが決まってきます。特に山形は四季によって食材が変わるのでお客さんもメニューに飽きない。飲食店にとって、これほど魅力的な県はないです」

超地元密着で
会員には600人が登録

 料理のレベルアップとともに、労務管理にも力を入れた。それもそのはず、音飯時代は「夕方5時から朝5時まで半年休まずやっていた」(高橋氏)というブラックぶりだった。

「会社の規模も大きくなり、従業員を雇うようになりました。恥ずかしながら、それまで労基法や最低賃金について何も知らなかったんです。立ち上げ当初のようなやみくもにトライアンドエラーを繰り返す方法では従業員が付いてこないと感じ、労務を勉強してホワイトな環境を作ることにしました」

 そうして、ホワイト化しつつも、店内でのイベントやライブ、新規出店を行い続けた。高円寺に集中出店する理由を高橋氏は次のように語る。

「僕たちがカルチャー好きということもあって、“サブカルの街”と呼ばれる高円寺とはお店のコンセプトと親和性が高い。実際、高円寺にゆかりのあるミュージシャンや芸人さんが来店して紹介してくれ、集客にもつながっていると思います。また、社是として『居心地のいい場所を作る』ということがあるので、まずはここまで支えてくれた高円寺に密着した会社でありたい」

「高円寺キッチン宣言」を打ち出し、街の食卓としてコロナ期間中はテークアウトも盛んに行い、連日完売を記録。さらに、近隣に住む常連向けに会員制度を作り、限定弁当を販売。その会員には600人が登録するなど、超地元密着型かつ地域住民にも愛されているのが伝わる。