『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』20万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

「他人が褒められていると焦ってしまう」人が知るとラクになる学びの本質Photo: Adobe Stock

[質問]
 ゼミの同期が先生から褒められていると聞き、焦っています

 いつもツイート拝見しております。大学4年生の者です。

 所属しているゼミの先生が、同期について「あの子はすごい」と褒めていた、という話を耳に挟み、自分の能力について焦りを感じています。

 その同期と同じ研究をしているわけではなく、能力のパラメーターも人それぞれなので、同じ尺度で測ることはできないことは承知しています。この嫉妬や焦りは、自分に足りないものを教えてくれるのでは、とも思っています。ただ、やりたいことをやりたくて選んだ分野で、「褒めてもらいたい」というような気持ちは、それはなにかが違うのでは、とも感じています。

 このような感情は、研究においては些末で不要なものでしょうか?

研究は「あなたの優秀さを証明するためのもの」ではありません

[読書猿の回答]
 嫉妬してしまうのは、あなたがそれだけ研究に真剣に取り組んでおられるからでしょう。ただし研究は、競争でもなければ、自分が優秀な人間であると証明するためのものでもありません。人類の無知を減らし知識を拡充する行為であり、その意味で知的営為に参加する者は皆互いに協力者です。

 研究によって功名心や承認欲が満たされることは、あっても稀であり、基本的には無いと言っていいでしょう。

 私たちは人類の知と無知の境界で繰り返されている挑戦のほとんどを知りません。しかし人類の認識能力は、そうした無数の知的営為によって支えられ更新されています。あなたがこれから明らかにするであろう発見も、人類を未踏の領域へ一歩進めます。