グラム陽性菌とグラム陰性菌の大きな違いは細胞壁。グラム陽性菌は分厚い細胞壁でからだをガードしています。一方、グラム陰性菌には頑丈な細胞壁はなく、その代わりに薄い膜で覆われています。この膜に含まれているのが、脂質と多糖が混じった「LPS」という成分。これが免疫機能に重要な働きを及ぼすのです。

 グラム陽性菌のなかに危険な菌があるように、グラム陰性菌にもコレラ菌やサルモネラ菌、大腸菌、ビブリオ菌といった恐ろしい病気や食中毒を引き起こす菌が多く含まれています。

 このため、強力な免疫細胞のひとつである「マクロファージ」には、これらを発見するためのセンサーがついています。そのセンサーが察知する成分のひとつがLPS。マクロファージはLPSを感じ取ると、「悪さをする何らかのグラム陰性菌が侵入してきた!」と認識し、免疫機能を活性化するのです。

 もちろん、酢酸菌はコレラ菌などとは違って、人体には無毒です。しかし、体内に入ってくると、やはりマクロファージは酢酸菌の表面にあるLPSに反応し、悪い菌だと認識してすぐさま免疫を発動します。

 LPSがこの免疫スイッチを刺激する働きは強く、近年、健康食品の分野では「免疫ビタミン」ともいわれて注目されるようになりました。

 アレルギーの症状を抑える治療薬は数多く開発されており、例えば花粉症の治療には、抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイドなどがよく使われています。

 しかし、これらの成分には眠気が起こるといった副作用があるため、常時、手軽に利用するのはやや問題があります。

 これに対して、酢酸菌の摂取には副作用はありません。長い年月、人間に利用されてきたものなので、食べても飲んでも問題なし。免疫機能をごく自然に強化し、アレルギーの症状をやわらげることが期待できます。

体内でアルコールを分解し、悪酔いを防いでくれる!?

 酢酸菌の健康効果については、免疫関係以外にも非常に興味深いものがあります。それはお酒との関係です。

 酢酸菌はアルコールをエサにして酢酸を生み出します。この酢酸菌ならではの特性に注目し、飲酒時に利用できないものかという発想から、キユーピーが研究に取り組んでいます。

 実験は飲酒習慣のある40~60代の男性7人を対象に実施。アルコール飲料に加えて、酢酸菌が入ったカプセルを飲んだ場合と、酢酸菌が入っていないプラセボのカプセルを摂取した場合とで、呼気と血中のアルコール濃度を測定しました。その結果、酢酸菌入りのカプセルを併用することにより、いずれの数値も低下しました。

 また、マウスを使った別の実験では、酢酸菌のカプセルを継続的に摂取すると、飲酒時の肝機能悪化や肝臓への脂肪蓄積が軽減されました。