これらの実験から、飲酒中または飲酒後に酢酸菌を摂取すると、胃のなかのアルコールを分解してくれることがわかりました。アルコールを酢酸に変える働きがある酵素は、酢酸菌の表面の膜に含まれています。ということは、酢酸菌をまるごと摂取すれば、お酒を分解する作用が期待できるわけです。

 胃のなかは酵素が働きやすい環境ではないので、酢酸菌を同時に摂取しても、どれだけ効果的にアルコールを分解してくれるのかはわかりません。いろいろな要因に影響されそうですが、飲み過ぎたときの悪酔い、あるいは脂肪肝などの改善につながる可能性があるのは確かといえるでしょう。

 こうしたアルコールが原因のトラブルを避けるためにも、酢酸菌が豊富なにごり酢の摂取をおすすめします。

黒酢にも「酢酸菌」が溶け込んでいる

 酢酸菌がそのまま残っているにごり酢には、免疫機能を強化する作用があります。

 実は、伝統的な製法でつくられた黒酢にも、酢酸菌が溶け込んでいることがわかっているのです。

 そのため黒酢にも、にごり酢と同じように免疫機能に働きかけ、花粉症や食物アレルギー、アレルギー性鼻炎といった、過剰な抗原抗体反応が原因で起こるアレルギーを抑える作用を期待できます。

 アレルギー症状を起こしやすくしたラットの細胞を使って行った実験があります。

 この特殊な細胞に、酢酸を取り除いて10倍濃縮した黒酢を加えて培養したところ、鼻炎やくしゃみなどを起こす化学物質の放出が抑えられました。

 同じような作用が、動物実験でも確かめられています。スギ花粉症などのアレルギー症状を起こすマウスに、黒酢の濃縮液を摂取させると、すべての症状がやわらいだのです。

 こうした免疫調節機能は、黒酢にたっぷり含まれている酢酸菌の働き。もっといえば、菌の細胞壁にある成分「LPS」の作用であることがわかっています。

 LPSの健康効果を得られるのは、黒酢が複雑な発酵を経たのち、もろみの状態で長期間熟成されるからです。長く貯蔵されている間に死菌が分解し、そのときにLPSなどの菌体成分が溶け出すと考えられています。