黒酢の免疫活性化成分を調べた研究では、菌の成分が黒酢に溶けていることをはっきり確認。この成分に、重要な免疫細胞であるマクロファージを活性化する作用が認められました。

 免疫機能を刺激する成分のLPSは、コレラ菌やサルモネラ菌などの「グラム陰性菌」なら、どの菌の細胞壁にも含まれています。そういったなかでも、酢酸菌のLPSは構造に特徴があり、酸性の環境下での安定性が良く、長い間、構造が維持されることがわかっています。

 この特徴から、黒酢のなかには酢酸菌のLPSが溶けて存在しているので、ろ過した商品でも効果を十分期待できるというわけです。

 黒酢にはさまざまな健康効果があることが経験的に知られていますし、それらのいくつかは、研究によって仕組みが明らかにされてきました。

 黒酢に確認されている抗酸化作用、抗がん作用、抗アレルギー作用、免疫を活発にする作用などには、酢酸菌の成分がかかわっている可能性があります。

 健康のために、にごり酢や黒酢を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

(監修/東京農業大学教授 前橋健二)

◎前橋健二(まえはし・けんじ)
東京農業大学応用生物科学部醸造科学科教授。日本の調味料研究の第一人者。1998年、東京農業大学大学院農学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(農芸化学)。同大学応用生物科学部醸造科学科助手、講師、准教授を経て、2016年より現職2003年には米国モネル化学感覚研究所にて味覚遺伝子の研究に従事。発酵における微生物と成分変化、発酵調味料、味の解析や味覚のしくみなど、「発酵」と「味」について、多方面から科学的アプローチを続けている。