河井被告は20年8月の初公判から一貫して無罪を主張していたが、今年3月の被告人質問から「選挙買収罪の事実については争わない」と一転して起訴内容を認め、4月には議員辞職していた。執行猶予を狙ったとみられ「逮捕後に受け取った相当額を贖(しょく)罪の形で非営利団体に寄付する」などと情状酌量を求めたが、判決は検察側の主張をほぼ全面的に認め、証拠隠滅の悪質さなども指摘されて一審ではかなわなかった。

 この事件を巡っては、自民党本部から河井被告と案里氏側に送金された1億5000万円(このうち1億2000万円は税金が原資)の使途が注目されたが、公判で河井被告は「1円たりとも買収に使っていない」と強調した。

 しかし、全国紙社会部デスクによると、選挙運動費用資金収支報告書や政治資金収支報告書などには記載がなかったという。それでは、どこに行ったのか。会計担当者は公判で「(買収資金は)党本部からの入金が原資」と証言。

 検察側は買収資金の原資について公判で立証する必要はないため深く追及はせず、判決の事実認定でも触れられてはいないが、デスクは「まぁ、社会人として一般的な常識をわきまえた方なら、想像がつくんじゃないですかね」と話した。

「最強の無所属」の
中村喜四郎氏は完全黙秘

 今回の判決を受け、永田町を震撼(かん)させたのが「閣僚経験者がバッジを外しても実刑なのか……」ということだった。筆者が全国紙社会部記者として永田町を担当していたころ、いろいろと教示してくれた元閣僚の秘書が驚いていた。

 最近では閣僚経験者の実刑といえば、鈴木宗男参院議員を想起する方が多いと思うが、この記事を読んでいる方ならば、やはり選挙において14戦無敗で、かつて「最強の無所属」の異名を取った元建設相の中村喜四郎衆院議員(現在は立憲民主党)を想起するのではないだろうか。