大物マフィアを起訴した
「伝説の検事」が加入

 2021年2月、マンハッタン地検はトランプ氏に対する捜査体制を強化するため、脱税およびホワイトカラー犯罪、金融犯罪などの取り締まりを専門とするマーク・ポメランツ氏を特別検事補佐として雇い入れた。

 ポメランツ氏は1990年代にニューヨーク南部地区連邦地検で犯罪局長として、五大マフィアの1つのガンビーノ一家の事件の捜査を指揮し、多くのギャングを刑務所送りにしたことで、「伝説の検事」として知られている。

 ちなみにガンビーノ一家のボスのジョン・ゴッティは「テフロン・ドン・ジュニア」の異名を持っていたが、その由来はどんな地獄にも耐える不屈の精神の持つ主ということで、フライパンの耐熱コーティング加工に用いるテフロンの名が付けられたのだという。

 ポメランツ氏はテフロンのようなタフなギャングを次々と起訴したように、トランプ氏を刑務所送りにすることができるだろうか。

トランプ一族の「金庫番」は
検察側に寝返るか

 検察が捜査を進める上でのキーマンにあげているのは、40年以上にわたりトランプ一族の「金庫番」として財務管理を仕切ってきた最高財務責任者(CFO)のアレン・ワイセルバーグ氏だ。「トランプ氏の違法行為に関する証拠がどこにあるのかすべて知っている」とされる、同氏の協力を得られるかが今後の捜査のカギとなる。

 検察は現在、ワイセルバーグ氏の家族とトランプ氏およびトランプ・オーガニゼーションとの関係について綿密に調査しているが、すでに同氏の息子夫婦の住宅の家賃や孫の私立学校の学費などが給与に上乗せし追加給付(フリンジ・ベネフィット)として会社から支払われていたことを突き止めたという。

 この情報を提供したのはワイセルバーグ氏の息子バリー氏の元妻のジェニファー氏だが、彼女は他にもワイセルバーグ氏やトランプ・オーガニゼーションの税制上の不正行為に関する証拠類を検察に提出している。ジェニファー氏によれば、トランプ氏が会社の幹部の忠誠心を高めるために寛大な追加給付を与えるのは常套手段だという。