フリンジ・ベネフィットは通常、課税対象となるが、問題はワイセルバーグ氏が税金を適切に納めていたかどうかである。もし同氏が意図的に税金を納めていなかったことが証明されれば、税法違反で起訴される可能性はある。

 2021年6月15日付のニューヨークタイムズ紙によれば、マンハッタン地検はワイセルバーグ氏に対し、起訴の可能性に言及しながら、トランプ氏の捜査への協力を求めているが、同氏はそれを拒否しているようだという。

 ワイセルバーグ氏はトランプ氏の捜査に協力すれば、司法取引の一環として起訴を免除してもらえるかもしれないが、それは長年仕えたボスに決定的ダメージを与えることになるかもしれない。

 前述のマイケル・コーエン氏は自分の大切な家族を守るためにトランプ氏と決別し、検察に協力して減刑を受けたが、はたしてワイセルバーグ氏はどうするのか。

前大統領の起訴という
重大な決定を下す大陪審

 トランプ氏はニューヨーク州の検察の捜査を「政治的で、党派的な魔女狩りだ。犯罪を必死に探す捜査ほど腐敗したものはない。まさにそれが起こっている」と激しく批判している。

 しかし、捜査を行っているのは検察だが、トランプ氏を起訴するかどうかを決めるのは、一般市民から選ばれた大陪審の陪審員である。

 23人で構成された大陪審は週3回秘密裏に審理を行い、検察によって集められた証拠書類などを審査している。トランプ氏やトランプ・オーガニゼーションに関する財務書類は非常に複雑で、陪審員にとって理解するのが難しいものが少なくないため、検察は法廷会計事務所と協力して、わかりやすく分析した報告書にまとめて陪審員に提出しているという。

 陪審員は大量の財務書類を審査し、証人の証言を聞いて審理した上で、トランプ氏を起訴するかどうかを決めるが、この場合、全員一致でなくてもよい。23人のうち最低16人が出席し、うち12人が賛成すれば起訴できるという。

 前大統領を起訴するかどうかの決定はこれまで誰も行ったことはなく、これは米国史上最も重要な刑事事件の一つとなるかもしれない。3カ月から半年くらいの間に決定は下される見通しだ。