1926年に米国シカゴで創立された世界有数の戦略系経営コンサルティング会社、A.T.カーニー。同社史上最年少で日本代表に就任した関灘茂氏と対談するのは、「お金の課題をテクノロジーで解決する」「すべての人のお金のプラットフォームになる」ことを掲げて2012年にマネーフォワードを創業、国内を代表するフィンテック企業にまで成長させた辻庸介氏だ。ネクストリーダーに求められる「妄想する力」とは?(構成/ダイヤモンド社編集委員 長谷川幸光)
「理想」から「現状」を引いた差分が
新規事業のチャンス
A.T.カーニー日本代表 関灘茂氏(以下、関灘) 前回、辻さんは、新規事業を軌道に乗せられる人の特徴について、「原体験」と「人を巻き込む力」の2つを挙げていらっしゃいました。その際に「ビジョンを語る能力」が重要とのことですが、それはなぜでしょうか?
京都大学農学部を卒業後、ソニーに入社。2004年にマネックス証券に出向(その後転籍)。2009年ペンシルバニア大学ウォートン校に留学しMBAを取得。帰国後、COO補佐、マーケティング部長を経て、マネーフォワード参画のため退社し、2012年にマネーフォワード代表取締役社長CEOに就任。2017年に東京証券取引所マザーズ市場に上場、2021年6月に東京証券取引所市場第1部へ市場変更。著書に『失敗を語ろう。』(日経BP)など。 Photo by Teppei Hori
マネーフォワード代表 辻庸介氏(以下、辻) ビジョン、つまり「理想」ですね。新規事業のチャンスは、「理想―(マイナス)現状」の差分なので、この理想をどれだけ高く掲げられるかというのが重要になってきます。掲げる理想が高いと新規事業の可能性がぐっと広がるんです。
日本の受験勉強って、正解を探しにいきますよね。でも新規事業というのは正解がありません。どこかに正解があるはずだと探しても、どこにもないんです。そのため、自分で正解をつくるんだという決意が必要です。
私もそのあたりの意識をチューニングするのにけっこう時間がかかりました。理想を高く保ち続けるために今もずっとトレーニング中です。
関灘 辻さんがおっしゃる「理想―(マイナス)現状」が新規事業の可能性を広げる、という言葉は心に響きます。
A.T. カーニーでは、「日本を変える、世界が変わる」というビジョン、理想を共有しています。世界中の経営者にとってロールモデルとなるような、結果として世界の時価総額ランキングでもトップ50に入る日本企業が生まれることに貢献したいと考えています。
神戸大学経営学部卒業後、A.T.カーニーに新卒で入社し、2020年に同社史上最年少の38歳で日本代表に就任。INSEAD(欧州経営大学院)MAP修了。グロービス経営大学院専任教授、K.I.T.虎ノ門大学院 客員教授、大学院大学至善館特任准教授、経済産業省「新たなコンビニのあり方検討会」委員。 Photo by Teppei Hori
そのような企業の経営者にとっての競争相手は、ジェフ・ベゾスやラリー・ペイジ、今は亡きスティーブ・ジョブズたちであると思います。
ジェフ・ベゾスはビジネスに、ラリー・ペイジはテクノロジーに、スティーブ・ジョブズはクリエイティブに、強みがあるように思いますが、これからの経営リーダーは、ビジネス、テクノロジー、クリエイティブの領域を越境し、高い理想を掲げる必要があると思います。
私は、なんとなく歩いていたら、富士山やエベレストの山頂に達していた、ということはないと思っています。そこには高い理想を掲げるリーダーが必要です。
私を含めた普通の人は彼らと同じことはできません。でも理想を描き始めることは誰でもできます。まずはそこから始め、より高い理想を描けるようになるしかないと思います。
辻さんの先ほどのお話の中に、理想を高く保ち続けるトレーニングとありましたが、どのようなトレーニングをしているのですか?