素晴らしい質問です。そうした際、私はまず、重要な決定を下すために必要なあらゆる情報を確実に集めます。そのうえで、チームに求められるものに基づき、合理的に決定を下した上で、緊急的な状況に対処しようとします。さらに、決定を下す上で正しい感情を持っているかどうか確認します。時に応じて思いやりも必要となるかもしれません。

 例えばある決定で立場が降格した人たちに対して、前進し続けるチャンスがあるという希望を与える必要があります。一方、あなたが誰かを昇進させたなら、その基準についても非常に明確となっているかを確認すべきでしょう。

 これらが重要な決定を下す際の順序です。また大きな決断をするときは、恐らく常々、組織には4つか5つぐらいのグループが形成されている中、最初に話すのは誰なのか、次は誰なのかも考えなければなりません。順序を間違えれば決定を台無しにしかねないからです。

――ご自身と日本との関わりも深いと思いますが、改めて日本への思い入れがあれば教えてください。

 ご存じの通り私の母は日系米国人です。よって、もちろん日本という国への愛着はあります。そして私の妻であるヒロコも日本人であり、日本との親和性は強いといえます。それもあって、ずっと日本のラグビーを強くしたいと考えていました。

 だからこそ、もし指導する機会に恵まれれば、私が持っているものすべてを注ぎ、日本が立ったことのない場所に連れていきたいと思っていました。そこには日本人の一部であるという責任感もあったと感じます。

 日本人のルーツといえる侍の文化では、忠誠心や誠実さ、信義など正しさを求めて懸命に戦っていた歴史がありました。そして、私たちが指導してきた日本代表チームの選手たちも、そうした考え方に大いに共感してくれたことに感謝しています。

Eddie Jones/1960年生まれ。オーストラリア人の父と日系アメリカ人の母を持つ。ラグビー選手として現役時代は前オーストラリア・ニューサウスウェールズ州代表として活躍。シドニー大学を卒業後、1996年プロコーチとしてのキャリアを日本でスタート。2001年オーストラリア代表ヘッドコーチに就任し、同代表を率い自国開催のラグビーワールドカップ2003で準優勝。2007年には南アフリカ代表のテクニカルアドバイザーに就任し、ラグビーワールドカップ2007優勝に貢献。2012年に日本代表ヘッドコーチに就任し、ラグビーワールドカップ2015では優勝候補の南アフリカ代表との初戦で、世界のスポーツ界でも語り草となる番狂わせを演じてみせ、3勝をもたらす。2015年11月にラグビーの母国・イングランド代表のヘッドコーチに外国人として初めて就任。就任後世界記録タイとなるテストマッチ18連勝を達成。日本で開催されたラグビーワールドカップ2019では準優勝を果たし、2020年第1回オータム・ネーションズカップでは優勝へと導いた。

【訂正】記事初出時より以下の通り訂正します。

2段落目:「日本がリードを奪った際、パスを選択した」→「日本がペナルティーを得た際、スクラムを選択してトライを狙いに行った」(2021年6月26日11:03 ダイヤモンド編集部)