キャリアの大三角形と演繹法人材より面積の大きな「キャリアの大三角形」を描くためには、3歩目を大きくジャンプし、高さを出すことが重要だ Photo:Mr. Patipat Rintharasri/EyeEm/gettyimages

 藤原和博氏の教育論は、日本企業に必要な演繹法人材の育成に、大いに参考になる。藤原氏は、リクルートから東京都杉並区立和田中学校の校長に就任し、民間人初の公立中学校校長として教育に新風を吹き込んだことで知られる。

 演繹法人材は、イノベーション時代に欠かせない人材だ。だが、日本企業の多くは帰納法的経営から脱却できておらず、ほとんどの社員は帰納法人材だ。

 帰納法人材は、経験から導き出された達成目標に対して、綿密に計画を立て、失敗のないように事業を進めることができる。

 一方で、仮説を立て検証し、その結果からさらに仮説と検証を繰り返し、新事業を創造、または既存事業を変革し、成長させるのが演繹法的経営で、こうした経営で活躍するのが演繹法人材だ。失敗を恐れず、軌道修正しながら事業をつくり出せる、“尖った人材”である。

 帰納法的経営を半世紀以上続けてきた日本企業は、演繹法プロセスには不慣れだ。だが最近、私の周りでは社内の尖った人材に果敢にチャレンジさせる先進的な経営者が増えてきている。シリコンバレーに拠点を置いて、イノベーションのきっかけを模索させているのだ。配属された社員たちの中には、ベンチャー投資などを通してシリコンバレーのコミュニティーに入り込み、演繹法の経営を体得し始める人も現れている。

 しかし、企業のイノベーションは一部の尖った人だけでは実現しない。シリコンバレーで見つけた先進的な事業や有効なアプリケーションを日本に紹介しても、途中で消えてしまうことが多い。その理由は、受け手側に演繹法的に考え行動できる人材が少ないからだ。

 つまり、演繹法的経営を成功させるには、事業を創造するだけではなく、新しい流れを受け止め、対応できる演繹法人材も育成することが必要なのだ。