参加者にうまく呼びかける方法

 では、具体的にこれを改善するには、どうしたらいいのでしょうか。

 部下(や同僚)とランチをしているとき、なにげない会話をしているときなどに気がついた具体的なエピソードや課題点などについて、まず2 on 2の最初に共有することが大切です。

「先日、I君とランチをしているときに、彼の困りごとを聞きました。成果が出ていないことや、わかっていてもそれに対してうまく行動できないこと。そのことに対して周りから詰(なじ)られたり、怒られたりしているがどうしたらいいか困っている。

 けれど、みんなにはこういうことを話せていないと。

 I君の困りごとをきっかけに、I君個人の話ではなく、組織の問題としてみんなで考えてみたいと思ったんです。彼の困りごと自体より、彼が『話せないでいる』事実に引っかかったからです」

 2 on 2を実施する際、参加者への呼びかけは、このように具体的なエピソードで組織の慢性疾患的な問題に基づいて行う必要があります。

 こうした問題の共有を踏まえた後に、そのことについて話してみたい人に手を挙げてもらい、当事者役を担ってもらうと、具体的な問題意識を共有したうえで2 on 2ができるので内容が深まっていきます。

2 on 2は
問題解決を一度脇に置く

 ここで大事なことは、I君の問題にフォーカスすると、I君の問題に終始するので、それを避けることです。

 そうではなく、I君が悩みを話せない問題が、自分たちの組織で慢性的に起きているので、I君のエピソードをきっかけに、そのことを話したい、と言うほうが望ましいです。

 問題意識がみんなの共感を得るには、日頃からどんなことが組織内で起きているのか、意識のアンテナを高めておくといいでしょう。

 そして、小さな問題を感知するセンサーが働いたら、2 on 2を実施してみるのが理想的です。2 on 2を実施しながら、問題についての観察を深めていくのです。

 2 on 2では、問題解決することを一度脇に置きます

「今現れている問題は一体何なのだろうか」と、観察を深めることに非常に重要な目的があるのです。

【追伸】「だから、この本。」についても、この本について率直に向き合いました。ぜひご覧いただけたらと思います。

【「だから、この本。」大好評連載】

<第1回> あなたの会社を蝕む6つの「慢性疾患」と「依存症」の知られざる関係
<第2回>【チームの雰囲気をもっと悪くするには?】という“反転の問い”がチームの雰囲気をよくする理由
<第3回> イキイキ・やりがいの対話から変革とイノベーションの対話へ!シビアな時代に生き残る「対話」の力とは?
<第4回> 小さな事件を重大事故にしないできるリーダーの新しい習慣【2 on 2】の対話法

<第5回> 三流リーダーは組織【を】変える、一流リーダーは組織【が】変わる

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体験者が初告白!「私にとって 2 on 2 は、言語化できないモヤモヤの正体が形になって現れた衝撃の体験でした。」

宇田川元一(うだがわ・もとかず)
経営学者/埼玉大学 経済経営系大学院 准教授
1977年、東京都生まれ。2000年、立教大学経済学部卒業。2002年、同大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。2006年、明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。
2006年、早稲田大学アジア太平洋研究センター助手。2007年、長崎大学経済学部講師・准教授。2010年、西南学院大学商学部准教授を経て、2016年より埼玉大学大学院人文社会科学研究科(通称:経済経営系大学院)准教授。
専門は、経営戦略論、組織論。ナラティヴ・アプローチに基づいた企業変革、イノベーション推進、戦略開発の研究を行っている。また、大手製造業やスタートアップ企業のイノベーション推進や企業変革のアドバイザーとして、その実践を支援している。著書に『他者と働く――「わかりあえなさ」から始める組織論』(NewsPicksパブリッシング)がある。
日本の人事部「HRアワード2020」書籍部門最優秀賞受賞(『他者と働く』)。2007年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)受賞。