「ちょっとムリさせたか…」と心配したあさとさんでしたが、お父さんは「今日はたくさん歩いたよね」とご機嫌そうでひとまずホッ。
すり足ぎみにちまちまとゆっくり歩き、青信号のうちに横断歩道を渡り切るのが大変で、すぐに何かにつかまりたくなるお父さんと一緒に歩きながら、あさとさんはこう考えます。
「いろんなことがままならなくなっていく それはそういうもんだろう。ままならなくなったところを お助けするのはなんでもない」
病気になったお父さんを一生懸命支えたい。そんな気持ちが伝わってきます。でも、問題はその後。
家に帰ったお父さんは「ただいまー」と言ったとたん、帽子とコートを床に脱ぎ捨てて、あさとさんにこう言い放つのです。
「片付けて」
それは認知症と関係なくない?と思わず突っ込みたくなるこの場面。著者のあさとさんに話を聞いてみました。
――それはただのワガママでしょ!思わず笑ってしまいました。
ワガママですよね。このエピソードもそうですが、マンガには父のいいところだけじゃなくて、ダメなところも描いたんです。たとえば、私が小さい頃は両親が仲良くなくて、父はカベに灰皿を投げて怒りをアピールしていた、とか。
――でも、どこか憎めない魅力があります。
人って年を取ったら、人間的に出来上がっていくんじゃないかという幻想を抱いていたのですが、父の介護を通じてそれが打ち砕かれました(笑)。でも、大変なことを描いて「大変だね」と言われるよりは、笑ってもらいたいという欲があるので、楽しんで読んでいただけるならうれしいです。
※発売中の『ねぼけノート 認知症はじめました』には、介護経験者なら共感せずにいられないエピソードはもちろん、親子の「あるある」話も満載です。
あさとひわ 著
定価1210円
(朝日新聞出版)