新型コロナウイルスの感染が拡大する中、欧州各国の政府はその対応に苦慮し、死亡率の高さやワクチン接種の遅れをめぐる批判にさらされた。だが危機が後退するにつれ、政治に驚くべき副次的影響が現れている。それは、反エスタブリッシュメント(既得権層)勢力の衰退と中道政党の台頭だ。人気の高かったフランスやドイツの極右政党が、最近行われた選挙では得票数が伸びず、世論調査でも退潮が明らかとなっている。イタリアでは(大衆迎合的な)ポピュリストの野党の支持率は頭打ちで、これら政党とイデオロギーを共有する中欧諸国の与党も軒並み支持率が低迷したり、野党の盛り返しに直面したりしている。こうした政党がスローガンに掲げる問題(移民や犯罪、イスラムなど)はコロナ流行の陰に一時的に隠れているが、意識の変化ではないという説もある。統計によると、ロックダウン(都市封鎖)や移動制限が行われていた期間、全体的に移民の流入や犯罪が大きく減少した。