残念ながら、世界人口の大半はいまだに貧困層が占めています。ここから経済発展によって中流層や新下流層の人口増加が起き始めている。中でも、お隣中国の平均的な庶民の生活水準が上がると、人口が多いために物価が動きます。

 牛肉が値上がりしたり、マグロの価格が上がったりしたと思ったら、中国でこれらの食材が人気だったなどというニュースをよく耳にするようになりました。未来予測の観点でいえば中国の所得増がまだまだ続くとすれば、それに伴って食物需要が長期継続的に増大していく可能性を意味します。

 もうひとつの長期要因が、アメリカの天候不順です。大豆の生産地とは地理的にずれていますが、今ちょうどアメリカ大陸北部を異常な熱波が襲っています。カナダ西岸、バンクーバーの北西にあるリットンという田舎町では、カナダ史上最高の49.6度という異常熱波を記録しました。

 科学的にはこの熱波はヒートドーム現象という特別な気象現象で説明できます。しかし、少し目線をひいて眺めると、2010年代以降顕著になってきた「100年に一度の異常気象」のうちのひとつの事象であるようにも捉えられます。

 そして、ここが長期予測的には重要な視点なのですが、2020年代から2030年代にかけて地球温暖化による異常気象は、どこかの年で確実に穀物生産に打撃を与えると予測されています。今年は「懸念」という形で大豆価格に影響を与えたようですが、長期リスクとしては懸念ではなく、グローバル規模の不作が現実となったときの影響の方が怖いと考えます。

 このように長期要因を分析したうえで未来のリスクを考えると、中国など新興国の経済成長は長期継続的な需要増要因であると考えられます。そして異常気象は長期のどこかでシナリオ的に起きる、突発的な供給激減要因だと考えて備えるべきです。