新興国の経済成長と、異常気象で
日本経済が受ける影響

 この二つのリスクと、日本経済の関係を考えてみましょう。

 世界の穀物生産量は、中国、ウクライナ、ブラジルといった新興国で生産性の向上があればまだある程度は増加する可能性はあります。一方で、これはマルサスが人口論で述べたのと近い話になるのですが、中流人口は近い将来倍増しますので、所得増加による食料需要の増加は生産増のペースを上回ります。

 結果的に、食料品の長期的な値上がりは避けられないと考えるべきです。そして、これが実は日本人の未来にとってはあまり好ましくない変化です。理由はスタグフレーションのリスクを意味しているからです。

 スタグフレーションとは、オイルショックのときに起きた経済現象です。ひとことで言えば不況の中で起きるインフレを意味します。オイルショックのときに何が起きたかというと、産油国が結束してカルテル(企業連合)を発動したために原油価格が一方的に高くなりました。これは、先進国からみれば“ただ原材料費や燃料費の価格が高くなった”ことを意味します。

 それまでのインフレは経済成長が引き起こすもので、日本でも高度成長期には「インフレは良いものだ」といわれてきました。しかし、経済成長を伴わないインフレは、ただただ貧困を加速します。スタグフレーションは、経済にとって良いことではありません。