郵政消滅#10写真:毎日新聞社/アフロ

旧特定郵便局長が組織した全国郵便局長会(全特)メンバーによる座談会の後編。かんぽ生命保険の不正販売など不祥事発覚後、本当にノルマ営業はなくなったのか。地方における郵便局長とはどのような存在なのか。特集『郵政消滅』(全15回)の#10では、現場を取り仕切る複数の郵便局長に語り尽くしてもらった。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

座談会参加者
A…全国郵便局長会(全特)幹部経験者
B…郵便局長・全特地方幹部
C…郵便局長・全特地方幹部
D…郵便局長・全特幹部

かんぽ不正販売の元凶となった
営業目標は民営化当初の2~3倍になっていた

――かんぽ生命保険の不正販売問題がありました。郵便局の社員の「ノルマ営業」の真相を教えてください。

B 営業目標が2007年の郵政民営化当初の2倍、3倍になった。昔はもう少し仕事に余裕があったんです。局員が目標を達成できなかったとしても、最後は局長自身が、地域の知り合いに「今度、社員が営業に行くんで頼むよ」と言ったら達成できた。つまり、局長の顔でなんとかなった数字だったんです。

 だけど、毎年20%ずつの急激な目標の上乗せが何年も続いて、何かが崩れ落ちていった。

――給与のインセンティブの問題や、未達成の社員へのパワハラがあったと耳にしたのですが、実際はどうだったのですか。

A 過度なインセンティブがありました。歩合給の他に、成績優秀者には海外旅行のご褒美がある。ああいうのは良くない。一度、営業でトップになったら、そこから評価が落ちないように無理して頑張っちゃうでしょう。

C 渉外の社員は歩合給の割合が固定給よりも多いこともある。成績がいい月は給料が2倍以上に増えることも。だから無理をしてしまう。

 本来は、人事評価は固定給に大きく反映させて、郵便局や会社全体に貢献した人の処遇を改善するべきだった。

 実際には、1匹オオカミで実績を稼いでいる人の方が給料をたくさんもらっていた。1匹オオカミを優遇する仕組みになっていたので、上司としては「こいつ勝手なことばかりやっている」と思っても対応のしようがなかった。

B 達成できない場合の罰則は叱責、あとは研修です。でも、小さな郵便局ではパワハラはないですよ。渉外の社員を大勢抱えている(旧普通郵便局などの)大きな郵便局とでは事情が違う。言葉は悪いが、渉外の部長は「どう喝するのが仕事」みたいなところがある。

――ノルマは本当になくなったのですか。