小泉純一郎政権で郵政民営化担当大臣や総務大臣を歴任した竹中平蔵氏は、日本郵政の“生みの親”ともいえる人物だ。民営化から14年。統治不全に陥っている日本郵政グループの「問題の病巣」はどこにあるのか。特集『郵政消滅』(全15回)の#11では、郵政民営化の旗振り役を直撃した。(ダイヤモンド編集部副編集長 浅島亮子)
ちゃんとした民間経営者が不在
日本郵政は「役人の天下りポスト」になった
――旧郵政キャリアや旧特定郵便局長らが日本郵政グループの経営に影響力を持ち続ける「多頭権力支配」が続いています。経営中枢の混乱は、現場社員のモラルダウンを招き、かんぽ生命保険の不正販売など不祥事も相次いでいます。民営化そのもの、あるいは、民営化の手段が間違っていたのではないでしょうか。
今の日本郵政の諸問題の原因は、民営化にあるわけではありません。元凶は、2009年の政権交代で与党となった民主党政権の下で、「本来の民営化の動きが止められたこと」にあります。過ちの起点はここです。
民主党政権は、政府が持つゆうちょ銀行やかんぽ生命の株式売却を遅らせました。これで完全民営化が遠のき、民のガバナンスが働かないことになってしまいました。
もう一つ、小売り事業を行う「郵便局会社」と宅配事業を行う「郵便事業会社」を、日本郵便という一つの会社にしてしまったことも良くなかった。巨大な組織の温存は弊害しか生みません。
――日本郵政グループでビジョンを持った経営陣は一人もいないのではないでしょうか。多頭権力支配の構造がある限り、誰が経営者となっても統治することが難しいです。
ちゃんとした民間経営者が日本郵政に行くのが難しくなってしまったのです。なぜだと思いますか。