キャリアを考えるうえでは、物事の原理原則の基本はトレードオフであることも忘れてはいけない。思考力や体力を家事育児に奪われる中、仕事でも独身時代と同じだけの成果を出すのは難しいものだ。ならば、「両立できないのではなく、今はそういうタイミングなんだ」ととらえて、気持ちを楽にしてみよう。大事なのはキャリア形成のスピード維持ではなく、レースから降りないこと、あきらめないことである。

◇「キャリアのマイものさし」を持つ

 しなやかなキャリアを構築するためには、会社の評価基準とは異なる、自分なりの選択の基準を持つ必要がある。これを本書では、「キャリアのマイものさし」と呼ぶ。キャリアのマイものさしは、キャリア選択や形成をするにあたって譲れない価値観を指す。

 キャリアのマイものさしに含まれる要素は、持っている資格やスキルである「できること」、人に言われなくてもやってしまう「やりたいこと」、いつか人生で成し遂げたい「やるべきこと」の3つだ。過去のアルバイトから現在の仕事に至るまでを思い浮かべると、思い当たるものがあるかもしれない。この3つを基準にすれば、仕事の条件や収入、福利厚生だけにとらわれることなく、自分らしいキャリアを選択しやすくなる。

◇「属人化防止力」を身につける

 仕事だけでなく家事育児も含めて自分が「頑張り過ぎている」と感じたら、何より先に「属人化防止力」を身につけるようにしたい。「属人化」とは、特定の人に対して仕事がつくことをいう。属人化すると、その人がいないと仕事がまわらなくなるという、大きなリスクをはらんだ状態になる。

 属人化は、なぜ起こるのか。原因としては、業務がマニュアル化されていない、担当者にしかわからない感覚的マネジメントが存在する、独占することで自分がその業務で必要不可欠な存在になる、などといったことが挙げられる。

 家庭内で夫婦の役割が偏るのは、どちらかに「属人化した業務」が発生しているからだ。とはいえ、子育てにおいて、どうしてもママじゃないとダメという状況は発生するものである。これを踏まえて、他の家事や作業は夫婦どちらがやってもいいようにしておくとよい。

◆「人間関係」の習慣
◇自分の思考グセに気づく

 日本は文化的に、空気を読むことを求められるシーンが多くある。その結果、日本の女性は、社会から求められる「像」に敏感になりすぎて、自分の価値観に鈍感になってしまいがちだ。