7月16日、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部で発言する首相の菅義偉(右から2人目)。翌17日、菅は日程も未定の中、自民党総裁選への出馬を誰よりも早く表明した7月16日、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部で発言する首相の菅義偉(右から2人目)。翌17日、菅は日程も未定の中、自民党総裁選への出馬を誰よりも早く表明した Photo:JIJI

 前首相の安倍晋三が3選を目指して自民党総裁選への立候補を表明したのは2018年8月26日。総裁選の日程が「9月7日告示、同20日投開票」と決まってからだった。視察先の鹿児島県垂水市で記者団に答えている。

「あと3年、日本のかじ取りを担う決意だ」

 この時点で安倍に挑戦状を突き付けていたのは元自民党幹事長の石破茂だけ。党内の7派閥のうち竹下、石破両派を除く主要5派閥がすでに安倍支持を表明していた。勝ちが見えていた安倍が「受けて立つ」という“横綱相撲”を演じたのが3年前の総裁選だった。

 ところが首相の菅義偉は総裁選の日程も未定の中で誰よりも早く出馬を明言した。7月17日放送の読売テレビ「ウェークアップ」の番組出演がその場となった。

「出馬するのは時期が来れば当然のことだろうと思っている」

 この突然の出馬表明について、菅に近い自民党幹部ですら「誰と相談して決めたのだろうか」と首をかしげる。ただ関係者によると、菅は東京五輪の開会式(23日)を目前に控えた17日のこの番組に出演することを早くから決めていたという。菅にしてみれば、ここが「出馬表明」のタイミングとみたのだろう。

 確かに「出馬せず」と答えるわけにはいかなかった。不出馬イコール退陣を意味するからだ。しかし、これまでの菅の言動からすれば、「コロナ対策最優先」と語って質問をかわすこともできたはずだった。それをあえてストレートに出馬を表明したのには、菅を取り巻く厳しい政治状況があったとみて間違いない。