安いニッポン 売られる日本#18Photo:RobinOlimb/gettyimages

シンガポールに並ぶアジアの金融センターである「香港」。中国共産党が統制を強め混沌の中にあるが、チャイナマネーの「窓口」であることに変わりはない。ダイヤモンド編集部による独自集計では、海外大口投資家別の「大量保有報告書」提出件数で世界4位だった。ヘッジファンドや思惑を持った投資家がひしめく中、「大富豪」光通信創業者の長男が「香港」から日本企業を買いまくっている様子があらわになった。特集『安いニッポン 買われる日本』(全24回)の#18では、こうした大口投資家の手口を詳述する。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)

光通信創業者長男も買いまくり!
データで分かった「香港」からの日本企業爆買い

 興味深いデータがある。ダイヤモンド編集部が過去3年間、延べ5万件に及ぶ「大量保有報告書」のデータを独自集計して分かった、国・地域別の同報告書提出件数(大量保有者別)だ。

 英国が1位で7345件(延べ数、以下同)、米国が2位で4898件なのだが、世界経済2位で隆盛を誇る中国本土(香港を除く)は、わずか4件しかなかったのだ。その理由について、大手証券関係者は「彼らは自分の身元がばれるのを極度に嫌う。分からないように香港やタックスヘイブン(租税回避地)の投資ファンドに分散するのが常道だ」と指摘する。

 そこで今回は、シンガポールに並ぶアジアの金融センターである香港を取り上げる。香港の大量保有報告書の提出件数は514件だった。シンガポールに次いで4位になる。

 また、香港全体の3年間の買越額(購入額-売却額)を計算すると5602億円で、シンガポールの2.2倍もの大きさとなった。チャイナマネーの「窓口」にふさわしい資金力を見せつけた格好である。

 さらに、香港から日本企業を爆買いした「大量保有者ランキング」を作成したところ、上位にはヘッジファンドや思惑を持った投資家がひしめく結果となった。その中でも、通信サービスを手掛ける光通信の創業者の長男が、香港から日本企業を買いまくっている様子が目を引いた。ちなみに創業者である重田康光氏は、米国経済誌「フォーブス」の「日本長者番付」ベスト10に入る大富豪である。

 次ページ以降、日本ペイントホールディングス(HD)や大崎電気工業などが上位に入った「香港で爆買いされた日本企業ランキング」とともに、大口投資家の手口や狙いについて詳しく説明したい。

図版:「コロナ後」に香港の大量保有者に買われた日本企業ランキング