安いニッポン 売られる日本#21Photo:olm26250/gettyimages

ロシアや中国、産油国がどの日本企業を幾ら買っているのか?残念ながら近年こうしたマネーのステルス化が進み、見えづらくなっている。だが、その移し先の一つがケイマン、ヴァージン諸島といったタックスヘイブン(租税回避地)であることは間違いない。そこでダイヤモンド編集部が独自集計し、タックスヘイブンから買われた日本企業と、大量に買った投資家をランキングした。特集『安いニッポン 買われる日本』(全24回)の#21では、彼らのベールを引き剥がし、住友商事、シャープなど爆買いされた日本企業の実名を明らかにする。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)

極端に少ない?ロシア・中国・産油国の名前
マネーの行き先はタックスヘイブンに

 ロシアの住所でヒットした件数は、ゼロ。オイルマネーの代名詞、サウジアラビアがわずか6件。米国との激しい対立も辞さない世界第2位の経済大国、中国本土も4件だけ――。過去3年間、延べ5万件に及ぶ「大量保有報告書」のデータを精査してみたが、彼らの名前は驚くほど少なかった。

 5%を超す大量の株式を買えば、速やかに報告書を提出しなければならない。このデータを利用して、ロシアや中国本土(香港を除く)などの日本企業に対する投資スタンスを探れるはずだという期待は、肩透かしを食う格好で終わった。

「2010年代半ばまでにステルス化が進んだ」と投資銀行関係者は話す。典型が中国だ。中国の政府系ファンドと目された「OD05」は、13年のピーク時、トヨタ自動車やパナソニックなど約170社の大株主として、その名義が登場した。日本株だけでも4兆円以上といわれる資金量を誇ったが、15年3月に姿を消した。

「複数の異なる名義に移し替えることで目立たないようにした」と、この関係者は指摘する。その移し先の代表格が、タックスヘイブン(租税回避地)だというのだ。

 それならば、タックスヘイブンを調べてみよう。ダイヤモンド編集部は、大量保有報告書に記載された住所の中で、英国領のケイマン諸島、ヴァージン諸島、バミューダ諸島に英王室属領のジャージー島。さらに欧州のアイルランド、オランダ、スイス、ルクセンブルクなどを、手作業でピックアップし、売買動向を集計した。いずれもタックスヘイブンとして有名どころの国・地域である。

 タックスヘイブンから買われた日本企業ランキングを作ってみると、その顔触れはシャープやソフトバンクグループなど大企業が目立つ形となった。べールに包まれたタックスヘイブンと、その背後でうごめく資金の思惑が垣間見られる独自ランキング4本を、次ページ以降で詳しく説明したい。

図版:「コロナ後」にタックスヘイブンの大量保有者に買われた日本企業ランキング(SAMPLE)