約束していたはずの債権者保護が守られていないし、ユニゾHDは債務超過に陥っている――。ユニゾHDの社債を持つ香港の投資ファンドが、買収騒動後の実態に激怒して事態究明を訴えた。特集『地銀転落 メガ銀終焉 銀行複合危機』(全10回)の#3では、投資ファンドの怒りの理由を詳報する。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
市外郭団体トップが辞任、高知銀で減損も
ユニゾ社債の価格急落で日本中が大混乱
誰もが予想しないかたちで、市の外郭団体トップが引責辞任に追い込まれる騒動が起きた。
3月24日、山形市の社会福祉法人である山形市社会福祉協議会が記者会見を開いて、余剰金の一部で買った運用商品で7400万円の損失を出したことを陳謝した。「このような損失を計上したことで、市民の信頼を損ねた」と述べた鞠子克己会長が、責任を取って4月末に会長職を辞任する一大事となっている。
収益性の高い運用先を求めて同協議会がたどり着いたのが、直線距離にして約317キロメートル離れた神奈川県横浜市に本社を構える、不動産会社のユニゾホールディングス(HD)の社債だった。だがその社債の市場価格が下落し、同協議会の運用規定を満たさなくなってしまったために売却損を出さざるを得なくなったのだ。
実際に、3月26日時点でのユニゾHD債の価格を見ると、額面100円に対して5月に償還を迎えるものは67円台、最も長期の2027年11月償還のものは22円台という落ち込みぶりを見せている。
価格下落の影響は、これだけにとどまらなそうだ。3月期末を迎えた瞬間、特に価格が下落したユニゾHDの長期債で損失を計上せざるを得ない社債保有者がさらに出てくるとみられる。
すでに1月8日の時点で、高知銀行が保有する有価証券について約11億円もの減損処理をすると発表済み。その一部には、渦中のユニゾHD債が含まれるという。
ユニゾHDは総額3000億円の負債を抱えている。
そのうち借入金を巡る厳しい資金繰りの実態は、本特集#1『地銀「ユニゾ危機」リスクが高い64行ランキング、巨額な無担保融資の末路』で述べた通りだ。同時に、ユニゾHDが発行した990億円の社債という観点からも、同社の行く末に不安の目が向けられている。
大手証券会社幹部は、ユニゾHD債は「倒産してもいいという値段で売買価格がついている」と述べる。ユニゾHDが破綻しても、保有する不動産を売却すれば、ある程度の資金が弁済されると見込んで動くファンド勢がいるとみられる。
こうしたユニゾHD債の取引状況を見て、ある地銀首脳は、「(市場参加者の)前提にあるのはユニゾの破綻だ」と断言した。
ただ、この状況を全ての債権者が黙って見守るばかりではなかった。ユニゾHDに対する怒りに震えて、立ち上がった投資ファンドがある。
香港を拠点とする運用会社のアジア・リサーチ・アンド・キャピタル・マネジメント(ARCM)だ。真相解明のために3回にわたって、ユニゾHDとその関係者に質問状を送りつけているが、彼らの狙いは一体何か――。