日本のDXの鍵は……

 ネリ氏は、「“情報の時代”から、情報から洞察を得る“洞察の時代”になる」と述べる。たくさんデータを集めるだけではなく、そこからいかにして洞察を得て、ビジネスや製品を改善するかが重要、と考えるからだ。しかも、その洞察を「いかに高速に得るか」が重要だと言う。

 自社イベントでネリ氏は顧客に向かって、「すべての企業はテクノロジーカンパニーになる必要がある。それがデジタル経済に参加するための必須条件だ」と述べた。だが日本の状況はというと、コロナ禍で、ITで出遅れていることが明らかになったという声もある。

インタビューに答えるネリ氏  Photo:DIAMONDインタビューに答えるネリ氏 Photo:DIAMOND

 NEC、日立製作所など日本の技術企業と戦略的関係を構築し、日本の顧客もよく知る立場からネリ氏は、「日本は保守的。(変革に向かう)勇気がないというより、何かを行う前にさまざまな思考プロセスを必要とする文化があるようだ」と見る。だが、変化の速いデジタル時代は、そのような文化が裏目に出かねない。「これからの時代に優位なのは、高速に動くことができること。勇敢に動かなければ出遅れてしまう」とネリ氏。

 ネリ氏の目には、工場のオートメーションなどが進んでいる日本は大きなチャンスがあると映っている。「データが生成されるところにクラウドを持ってくる。そして、製造プロセスで生成されるアナログデータをデジタルに変えてリアルタイムで処理することができれば、素晴らしいことが起こる」とネリ氏。

 DXを進めようにも、コストと人材の壁に直面している中小企業に対しては、最初にやるべきことを「標準化」とアドバイスする。「ビジネスプロセスを標準化すれば、簡単に新しいテクノロジーを実装したり、拡張できたりする」とネリ氏。イタリアやドイツなど欧州の国でも、SMBはこのアプローチでDXの第一歩を踏み出しているという。

 「HPE社内では、居心地の良い状態を維持するよりも勇敢な変革を優先させよう、と声をかけて変革を続けてきた。日本企業も同じことができるのではないだろうか」