首相の菅義偉が政権の命運を懸けた東京五輪が閉幕した。競技を振り返れば、金メダルラッシュで日本人選手の活躍が目立った。五輪を追い風に政権を浮揚させる。これが政権与党が描いた基本戦略だった。元官房長官で五輪招致に尽力した河村建夫が大会中に地元、山口県萩市の会合で思わず本音を吐露した。
「五輪で日本選手が頑張っていることは、われわれにとって大きな力になる。五輪がなかったら厳しい選挙を戦わないといけなくなる」
菅を筆頭にした自民党議員全員の本音といってよかった。洪水のような五輪報道が続き、コロナ禍の日本を元気付けたことも事実だろう。しかし、これだけの五輪報道にもかかわらず、政権浮揚に直結したのかとなると疑問符が付く。新型コロナウイルスの感染爆発が生じたからだ。7月29日の段階では菅にはまだ余裕があった。記者団の追及にもこう答えている。
「一番感染が多いといわれた65歳以上の高齢者は(感染者のうち)3%を切っているときもある」
ところが瞬く間に菅の楽観論は打ち砕かれた。31日には東京都の新規感染者が4058人に達し、全国の感染者数は1万2341人を記録した。そして8月2日からは東京、沖縄に加え、埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県に緊急事態宣言が発令。さらに北海道、石川、京都、兵庫、福岡にまん延防止等重点措置が発動された。