筆者は市場で何が起こっているのかを理解できないといら立ちを感じる。ここ数カ月の米国債市場の奇妙な動きについても、自らの説明にはあまり満足していない。他のほとんどのことが米国債の合理的な動きにかかっていることを考えると、筆者のいら立ちは大きい。問題の中心は、インフレ率の上昇に伴って債券利回りが低下するという矛盾がにわかに生じたことだ。インフレは債券投資家にとっては有害なため、本来であれば債券は売られるはずだ。理由は説明できるが、完璧ではない。筆者の考えはこうだ。投資家は、コロナ禍後の巨額の債務負担によって金利が過去よりも低く保たれることに気づいてはいるものの、インフレは管理可能だと信じている。連邦準備制度理事会(FRB)がリセッション(景気後退)を誘発する過ちを犯すことを投資家が恐れていることを示す兆しはほとんどなく、投資家はインフレの暴走も予想していない。