北京五輪でも小規模事業者は潤わず

 翻って、今回の東京ではどうだったか。

 千駄ヶ谷の新国立競技場に通じる外苑西通り、山手通り、代々木公園通りでは、観光バスはほとんど見かけなかった。新宿の伊勢丹、銀座の三越で買い物をしているのは日本人で、外国人観光客の姿はほとんどない。東京2020における観光消費といえば、選手や関係者が選手村や空港で支払った飲食代やおみやげ代ぐらいのものだろう。当然のことながら、選手や関係者は外出が制限されているので、観光地や商業施設での売り上げは見込めない。

 観光庁によると、外国人観光客による観光消費は2019年に4.8兆円に膨らみ、東京大会が開催される予定だった2020年には8兆円の消費が見込まれていた。しかし、コロナ蔓延による世界的な渡航制限と東京大会の1年延期により外国人観光客自体が消滅し、同年の観光消費は7446億円となり、前年比で約85%も下落した。(参照

東京五輪期間中の銀座の様子東京五輪期間中の銀座の様子(2021年8月筆者撮影)

 一方、13年前の北京五輪でも、多くの町の小売業者が“インバウンドによる五輪効果”を胸算用していたが、期待外れに終わってしまった。外国人観光客の多くは貸し切りバスで移動してしまい、小規模店舗を素通りしてしまったからだ。他方、中国人旅行客に期待したものの、開催期間中は当局が他の省からの移動を制限したため、これもあてが外れた。

 北京市民は家にこもって観戦に夢中になり、結局「五輪効果」は小規模事業者を十分に潤すことにはならなかったのである。