教育現場では、感情をむき出しにして子どもを叱責したり、何度もダメ出しをしたりする姿が見られるが、これでは逆効果だ。子どもを心理的危険状態に追い込むと、子どもの頭には言われたことがほとんど残らない。その一方で、「怒られた記憶」はショックや恐怖心、怒りなどの強い感情とともに、しっかりと記憶に残ってしまう。

 なにも「ストレス要因をすべて取り除き、子どもを『温室』で育てよ」と言っているわけではない。大切なのは、不要なストレスを排除しつつ、子ども自身でストレス反応との付き合い方を見つけ、心理的安全状態をつくれるように支援することである。

「自分ならできる」「自分ならなんとかなる」という自己肯定感が高まると、ストレスホルモンの分泌量が減るという研究結果もある。子どもが否定されない環境を用意し、「ストレスをストレスとして感じにくい脳」に育てることが重要だ。

◆心理的安全状態のつくり方
◇心理的安全状態をつくる2つのポイント

 子どもの脳はさまざまな体験を通して、考える力や創造する力、対話をする力、感情をコントロールする力などを鍛え、成長していく。だが学校や家庭環境が劣悪だと、子どもの脳に負荷がかかるばかりで、成長するどころではない。

 子どもを心理的危険状態に追い込むストレス要因は、叱責、校則、体罰、対人関係、部活動、通知表、宿題、テスト、偏差値、平均点、受験など、いくつも考えられる。これらが子どもの脳にどのような悪影響を及ぼし、発達を阻害しているのか、私たちはよく考えてみるべきだろう。

 子どもの脳を心理的安全状態に保つためのポイントは2つだ。ひとつは、子どもたちに「失敗しても大丈夫だよ」「失敗こそが学びなんだよ」と言葉をかけ、何をやっても許される環境をつくること。もうひとつは、心理的安全状態を自らつくり出すことが得意な脳を育むことだ。これを達成するために、麹町中学校では「3つの言葉がけ」を実践している。

◇いじめや不登校がなくなる「3つの言葉がけ」

 まず「どうしたの?」と声をかけて子どもが置かれた状況を言語化してもらう。授業に出ず、雲隠れした子どもを見つけても、「さっさと教室に戻れ!」などと怒鳴ってはいけない。そんなことを言っても、「あの授業、クソつまんないんだけど」などと反発されるだけだ。