「何かを達成しなければ、次に進めない」

 Mさん1人の手取り収入は毎月27万円ほどで、そのうち7万円が家賃。やりくり可能な生活費は、収入から家賃を引いた20万円ほど。そのやりくりの状況は、おおむね収支トントンといったところです。妻のパート代を家計に入れれば、約4万円収入が増え、そこから貯金をしたり、投資をする金額を増やしたりしていけるのですが、どんなに提案してもそこは受け入れられません。「何に使っているかは分からないが、そこは妻の自由にさせたい」の一点張りです。

 また、家計管理をして支出を削減し、貯金を増やしながら投資もしていくという取り組み方ができれば、今よりもずっと効率よく資産形成を目指せます。しかし、まずは家計を見直して支出を減らし、貯金を増やす。貯金が増えて生活防衛資金ができたら、投資にも本腰を入れる……というように「何かを達成しなければ、次に進めない」という考え方で、「家計改善を頑張るのなら投資どころではないし、まずは支出を絞って貯金を作ってから」と思っているために、せっかく始めた積立投資信託もやめてしまいそうな雰囲気です。非課税制度のメリットを理解したために、「投資をするならつみたてNISA」と思ったようですが、「貯金が十分にできる前に投資を始めると、良くない結果になりやすい」と思っているように見受けられました。

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 家計管理の面では詰めが甘く、もっと貯金を増やすことにつなげられそうなのに、妻の収入は野放しのまま。家計改善も貯金も投資もいっぺんに進めることができれば、時間を味方につけ、効率の良い資産形成も可能になってくるのに、一つずつステップを踏んでいかないと先に進めない不器用さ。こうしたこだわりや柔軟性のなさを克服できれば、順調に資産形成を進められるでしょうに、せっかくの家計改善、資産形成のチャンスをみすみす逃してしまっているように思え、非常にもったいないと感じました。

 もちろん、お金をためるステップに注力する、ためる・増やすに必要な条件をそろえるなど、基本的な部分を大事にして取り組むのも大切なことです。ですが、ムダなくためる、必要以上の時間をかけずに効率よく増やしていくと考えた時には、それらを組み合わせ、柔軟に取り組むこともまた、とても大切なことなのです。