李洛淵氏は、李在明氏の人間性と政治家としての資質に、李在明氏は李洛淵氏の「無能」ぶりに、それぞれ焦点を当て攻撃を緩めようとしない。

 李在明氏の人気を支えるのは、サイダーのようにスカッとする「サイダー発言」と、いかなる反対があっても自己流を貫くこと姿勢にあるとみられる。

「大統領になったら犯罪者は全員処刑だ」と、大統領選期間中に豪語したフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領と生い立ちや言動が似ているとして、「韓国版ドゥテルテ」との異名を持っているほか、ジョージ・W・ブッシュ元米大統領を「悪魔」とののしるなど歯に衣着せぬ発言で有名なベネズエラのウゴ・チャベス元大統領になぞらえて「韓国のチャベス」と呼ぶ人もいる。

ポピュリズム的政策で人気
女優とのスキャンダルの渦中

 1964年、慶尚北道の貧しい農家に生まれた李在明氏は小学校卒業後、少年工として工場で働きながら検定試験(正規の学校教育を受けてない人が高校卒業と同等な学歴を取得する試験)に合格。その後、韓国中央大学に進み卒業と同時に22歳で司法試験に合格した異色の経歴を持つ。

 政治の世界に足を踏み入れたのは2006年。開かれたウリ党(現「共に民主党」)から城南市長に出馬したが落選、しかし10年に再挑戦して当選した。

 市長在任中に不正腐敗を根絶するとして市長室に監視カメラ(CCTV)を設置したり、老後のための住宅リフォーム支援や無償で産後女性の面倒を見る医療施設の建設を推進したりするなど「親庶民」政策を次から次へと打ち出して人気を博した。

 再選の後、18年6月には京幾道知事に転身したが、市長、知事在任中に、城南市に3年以上居住した24歳以上の青年には一律3カ月ごとに50万ウォンずつを支給したり、「城南愛商品券」を特定年齢層の青年たちに配ったりするなど独自の「福祉政策」を行った。

 今回の大統領選挙では「当選したら任期内に青年には一律年間200万ウォン、全国民に一律年間100万ウォンの基本所得を支給する」という公約を掲げている。

 財政規律を無視するようなポピュリズム的な人気取り政策は国家を破綻に陥れる危険な政策だとの批判も強いが、今のところ李氏の与党候補1位の地位は揺るぎないようだ。

 ただし問題はなくはない。世論調査などの支持率が20%台で伸び悩んでいることだ。