その背景には有権者の多くが、李氏の人間性や資質を問題視していることがある。

 過去に既婚の事実を隠し女優と不倫関係にあったことが取り沙汰されている。李氏は否定しているが、1年半以上も交際を続けたとする女優は、彼の体のある部分に黒いあざがあることを“暴露”、予備選挙のテレビ討論でも他の候補者がこの問題を持ち出した。

 李氏は「では、この場でズボン下ろしましょうか」と応じてみせたが、この問題で国民の不信感を十分に払拭するような説明はしていない。

 ほかにも兄の妻に電話でしばしば罵詈(ばり)雑言を浴びせる音声が公開されたり、過去に検事を装い反対側の政治家から隠密の話を聞きだした前歴や飲酒運転で罰金刑を受け「前科4犯」だったという公的証明書が出回ったりしている。

 さらに、2017年の大統領選予備選挙で李氏は、文在寅(ムン・ジェイン)候補(当時)を激しく攻撃、家族の不祥事まで持ち出したことから、文支持者の中には李氏に距離を置く人もいる。

 退任した大統領が、その後の政権によって汚職などで摘発されることが多い韓国では、文氏の支持者にとっては安心できないという思いがあるようだ。

対抗する李洛淵元首相
文大統領の支持者らが期待

 一方の李洛淵氏は、ソウル大卒業後、大手新聞の東京特派員をした後、金大中大統領の抜てきで2000年に国会議員に初当選。14年には全羅南道知事、その後、文政権の初代首相や「共に民主党」代表を務めるなど華やかな経歴を持っている。

 安定感などは評価されているが、一方で自らの主張をはっきり言わないのが優柔不断と映り、文氏の顔色を気にするかのような言動もあって、社会に変化を望む空気が強い中では人気という点では李在明氏ほどではない。

 それでも辛うじて与党候補で2位の立場を維持しているのは、文大統領の熱烈な支持者たちの間で、文大統領退任後に文氏を守ってくれる可能性のある候補は李洛淵氏だということで、支持があるからだ。

 このことは李洛淵氏にとっては強みでもあるが、支持が広がらない限界でもある。

支持率トップの尹氏
与党の総攻撃に耐えられるか

 野党の有力候補者は、皮肉にも、尹錫悦氏、崔在亨氏ともに文政権で要職に就いていた人物だ。

 尹氏は文大統領に検察改革を期待され検事総長になったが、在任中に、文氏の後継者ともささやかれていた曺国(チョ・グク)大統領首席秘書官(後の法相)に対する捜査、起訴をきっかけに文政権と対立するようになった。