職務停止命令を受けたが、それでも文大統領の関与が疑われる蔚山市長選挙(文氏の友人を市長に当選させるため大統領府をはじめ7つの権力機関が選挙に関与した事件。大統領府秘書官を含め10数人はすでに起訴)や、文氏の指示でデータ改ざんが行われて月城原子力発電所1号機を無理やり止めたとされる事件の捜査を進めた。

 職務停止命令は裁判所で手続きの不当が認められ、いったん、尹氏は復帰したものの、結局、21年3月には検事総長をやめ、その後、「国民の力」に入党し大統領選に出馬した。

 この一連の経緯の中で国民の間での尹氏の人気は急上昇した。最近は支持率が低下しているとはいえ、それでも韓国世論調査専門機関のリアルメーターが8月9~10日に実施した調査(全国の18歳以上の男女2031人を対象)によれば、有権者の26.3%が、次期大統領にふさわしい人物として尹氏を挙げた。

 また与野党候補の一対一の対決になった場合、42.1%が尹氏を、35.9%が李在明氏を支持すると答えた。ちなみに尹氏と李洛淵氏との対決では、43.7%が尹氏を、33.0%が李洛淵氏を支持するという結果だった。

不安材料は
検事総長時代や親族の疑惑

 しかし尹氏にも不安材料はある。まずは尹氏個人への与党と文政権の組織的な攻撃だ。

 8月13日付「世界日報」によれば、文政権が検察改革の目玉として設置した「高位公職者捜査庁」は、7月末に大検察庁監察部を家宅捜索して尹氏に対する「観察資料」を押収し、近く尹氏を召喚して取り調べる方針だという。

 尹氏が検事総長在任中に、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相に絡む私募ファンド詐欺事件(最高裁判所で有罪が確定した事件)の捜査で証人に偽証を教唆したという疑惑だ。

 この問題ではすでに何度も捜査がやり直され、結局、尹氏の関与はなかったとされたが、また尹氏が取り調べを受けるということになれば、それだけでも打撃を受けると与党はみている。

 尹氏の妻と義理の母にまつわる疑惑もある。