1926年に米国シカゴで創立された世界有数の戦略系経営コンサルティング会社、A.T.カーニー。同社史上最年少で日本代表に就任した関灘茂氏の今回の対談相手は、世界9拠点で展開するデザインコンサルティングファーム、IDEOの日本共同代表を務める野々村健一氏。グローバルに展開するコンサルティング会社の日本代表を務め、同世代という共通点のある2人による対談の後編。イノベーションが生まれる「2つの経緯」とは? 組織人は変わることができるのか? 多様性は本当に役立つのか? イノベーションのために社会はどうあるべきか? 「イノベーション」について徹底対談してもらった。(構成/ダイヤモンド社 編集委員 長谷川幸光)
多くの企業が「人」を起点にしようと
試行錯誤を重ねているが…
A.T.カーニー日本代表 関灘茂氏(以下、関灘) 前回(『新型「フォードブロンコ」は世界でなぜ大ヒット?A.T.カーニーとIDEOの日本代表が語る』参照)、フォードさんのケースで、自動車をはじめとする製造業は、どうしても「台数」から物事を考える傾向があるが、フォードのCEOであったジェームズ・ハケット氏は、「人」から始めることを掲げ、それが新型「フォードブロンコ」の成功につながったと伺いました。
多くの企業も同様に、「人」を起点にしようと考えており、この10~20年、試行錯誤を重ねていると思います。でもなかなか成功できない。それにはさまざまな理由があるはずです。
例えば、元プロ野球選手のイチローさんの野球の捉えかたには独自のものがあって、それに応じて、練習の目的や目標の置きかた、上達するための練習の仕方などもまた変わってくるのだと思うんです。だからこそ、ほかの多くの野球選手とは一線を画す成果、アウトプットが残せたのではないか。
また、プロダクトやサービスをつくる過程を細密化していくと、プロセスごとにステークホルダー間の考えに違いが生じるため、最終的な成否が分かれてしまってうまくいかないこともあると思います。
先ほどのフォードさんの話に戻ると、イノベーションの捉えかた、イノベーションの発生確度を高めるための仕事の仕方、仕事の目的や目標の置きかたなど、独自のものがあったのでしょうか? 以前のフォードさんとここが違う、ここを変えたといったお話があると、大企業が「経路依存性」を脱却する上での参考になるのではないかと思います。
IDEO Tokyo共同代表 野々村健一氏(以下、野々村) 大企業でイノベーションを起こしたい、そういうときに一番大変な立ち位置にいるのが、中間管理職、ミドルマネージャー層ですよね。企業内には「20年間、このやりかたでやってきた」「我々はこれがあるべき姿だと思っている」という人たちも多い。