世界の「ラボ」からイノベーションが生まれづらい3つの理由とは?世界の「ラボ」からイノベーションが生まれづらい3つの理由とは? Photo by Teppei Hori

1926年に米国シカゴで創立された世界有数の戦略系経営コンサルティング会社、A.T.カーニー。同社史上最年少で日本代表に就任した関灘茂氏の今回の対談相手は、世界9拠点で展開するデザインコンサルティングファーム、IDEOの日本共同代表を務める野々村健一氏。グローバルに展開するコンサルティング会社の日本代表を務め、同世代という共通点のある2人が「イノベーション」について徹底対談。前編ではIDEOが参画する三井物産やフォードのプロジェクトを例に、イノベーション成功の本質を探る。(構成/ダイヤモンド社 編集委員 長谷川幸光)

イノベーションを起こせない多くの理由は
企業風土や社内体制に課題がある

関灘 茂関灘 茂(せきなだ・しげる)
神戸大学経営学部卒業後、A.T.カーニーに新卒で入社し、2020年に同社史上最年少の38歳で日本代表に就任。INSEAD(欧州経営大学院)MAP修了。グロービス経営大学院専任教授、K.I.T.虎ノ門大学院 客員教授、大学院大学至善館特任准教授、経済産業省「新たなコンビニのあり方検討会」委員。 Photo by Teppei Hori

A.T.カーニー日本代表 関灘茂氏(以下、関灘) 今回は「イノベーション」というキーワードを軸に、深いお話ができると思い、楽しみにしていました。

 企業の基本的な機能は、「マーケティング」と「イノベーション」ともいわれます。私自身も、数々の「マーケティング」と「イノベーション」に関するプロジェクトに従事してきました。

 その中で、多くの企業のかたがたが「イノベーションというのはそう簡単に起こせない」とおっしゃいます。また、「イノベーションを起こすための企業風土や社内体制がない」という意見も伺います。

 多くの経営者のみなさんの悩みでもあり、経営者に期待されている多くの役員、部長、課長のみなさんも「どうやればいいのだろう」と、悩んでいる。

 アイデアが出ても「アイデアが小粒である」「なぜ我が社がやるべきなのか?」「いつ成果につながるのか?」といった声にさらされ、筋の良さそうなアイデアもつぶされるなど、読者含め、もどかしい思いを持たれているかたも多いのではないかと思います。

 イノベーションといっても、ビジネスの現場では、さまざまな定義や種類があると思います。たとえば、「iPhoneのようなプロダクト開発をイノベーション」という人もいれば、「音楽との接点や購入方法をガラリと変えたiTunesのように、サービスを含めた全体設計をイノベーション」という人もいます。

野々村健一野々村健一(ののむら・けんいち)
IDEO Tokyoマネジングディレクター兼共同代表。慶應義塾大学卒業後、トヨタ自動車に入社し、海外営業や商品企画を担当。その後、米ハーバード・ビジネススクールへ私費留学し、経営学修士(MBA)を取得。IDEOの東京オフィスの立ち上げに従事し、国内外のさまざまな企業や団体とのプロジェクトを手がける。IDEO共同出資のベンチャーキャピタルファンド、D4Vのファウンダーも務め、日本のスタートアップや起業家の支援も行う。クリエイティビティとビジネスの橋渡しを務め、 そこから変化とイノベーションを生み出すことに情熱を持つ。著書に『0→1の発想を生み出す 問いかけの力』(KADOKAWA) Photo by wakakojet

 さらには、「アマゾンのように、ECで顧客接点を築き、メディア・コンテンツなども含めたB2Cの事業領域を拡大する裏側で、クラウドサービスなどのB2Bの事業領域で利益を稼ぐ、といったビジネスモデル全体がイノベーション」という人もいらっしゃるかと思います。

 このように、イノベーションの領域はかなり広いといえますが、野々村さんは、どういった種類の「イノベーション」に関わるプロジェクトを手がけられることが多いのでしょうか?

IDEO Tokyo共同代表 野々村健一氏(以下、野々村) IDEOの東京オフィスができて今年で10年になります。10年前は「イノベーション=新しいもの(プロダクト)をつくる」というイメージが世間に広がっていて、そのための方法論として「デザイン思考」もだいぶ取り沙汰されました。

 私たちの関わる領域はおっしゃるとおり、幅はかなり広いです。新しいプロダクトを生み出したいという要望もあれば、それを継続的に生み出すための組織へと変えていきたい、あるいはそうした文化をつくり出したい、という要望もあります。最終的には、業界丸ごと変えたいという規模感になることもあるでしょう。

 イノベーションという言葉の下には、必ず「やりたいこと」「やるべきこと」が埋まっています。それをクライアントと相談したりディスカッションしたりしながら掘り下げていくと、「なぜこれが今まで世の中になかったのだろう」と思えるような「新しい価値」や「新しい体験」が見えてきます。それを形にすることがイノベーションであると考えています。

 さらにイノベーションという言葉を掘り下げていくと、その根底にあるのはひとつです。