この質問に答える前にまず、医療用大麻をすでに合法化している世界47カ国の中で、日本と地理的にも文化的にも近いアジアの韓国やタイなどの状況を紹介し、アジアの「合法大麻」市場の将来の可能性を探ってみたい。

タイでは700以上の診療所が
大麻治療を開始

 2019年2月に東南アジアで初めて医療用大麻を合法化したタイでは、医師の処方箋があれば患者は大麻由来の医薬品や乾燥大麻を使用することが可能となった。

 タイ国内では現在、758の病院・診療所に医療用大麻を処方する許可が与えられ、約700の大麻業者に生産・加工・販売のライセンスが付与されているが、同時に嗜好目的の乱用を防ぐための対策も行われている。

 たとえば、医療用大麻を使用できる条件として、がん、てんかん、糖尿病、緑内障、パーキンソン病、リウマチ、統合失調症、高血圧、PTSD、中毒離脱症状など38の病気・症状を持つ患者に限定し、処方は政府の許可を受けた病院、診療所のみが行うことになっている。

 これらはインターネットで検索できるので、患者は最寄りの診療所を見つけて予約することが可能だ。

 実はタイでは1934年の麻薬取締法によって禁止されるまで大麻は薬として使われ、伝統代替医療でハーブなどと一緒に大麻の葉が使用されていた。そのため、現在も大麻に親しみを持つ人は少なくなく、紅茶や料理に大麻の葉を入れて写真を撮り、SNSに投稿して盛り上がっている患者もいるという。

 タイ政府は医療用大麻ビジネスを経済成長にとって重要と位置づけ、将来的には大麻治療を国内のタイ人だけでなく、外国人観光客も利用できるように「医療用大麻ツーリズム」の準備を進めている。