ワクチン接種は個人が自己判断で行うべきで、強制はできない

<新型コロナワクチン接種を拒否した場合の懲戒規定について>
(1)業務命令とは、企業が業務遂行の目的で社員に対して行う命令や指示のことで、労働契約を交わしたときに双方で合意されている内容なので、業務上の必要性や合理性が認められる場合は、社員はそれに従う義務がある。

(2)社員が企業の命令や指示を守らずに、その結果業務命令違反として取られた場合、懲戒処分の対象になる可能性がある(ただしその旨を就業規則への明示が必要)。

(3)ただし、就業規則に明示されていても、業務命令として社員に新型コロナワクチンの予防接種を受けさせることが、業務上の必要性や合理性として認められるか否かの判断を必要とする。

 そしてD社労士は説明を続けた。

(4)従業員の生命・身体に危険が生じる業務命令を企業が行う場合は、その命令を発する際に慎重な考慮が必要であるとの判例がある(最判昭和43年12月24日民集22巻13号3050ページ「電電公社千代田丸事件」)。

(5)社員が新型コロナワクチンを接種した場合、発熱や腕の痛み、嫌悪感などの副反応が起こる確率が高く接種を受けた者の身体にダメージを与え、万一副反応の症状が重症化した場合、最悪生命の危険が伴う可能性がある。

(6)そのためワクチンを接種する場合は、個人が(5)を考慮の上自己判断で行うこととし、一般的には企業が社員に対して業務命令による強制接種はできないとしている。

(7)たとえ就業規則で予防接種義務の規定があった場合でも、業務上の必要性や合理性を認められず無効となる可能性が高い。特に労働者が医療従事者だったり、高齢者施設などに勤めていたりする場合、企業が業務上の必要性を理由にワクチン接種を強く要請することになるが、それでも合理性に欠けるため強制まではできないとされている(労働契約法7条)。

「では、ワクチン接種または予約を終了した社員に会社からすき焼きセットを送付することはOKですか?」