メルカリは「HOW」と「WHAT」の変革

尾原 それで思ったのは、高宮さんは「メルカリ」に投資していますよね。「メルカリ」は、「ヤフオク」がある中で「何でもう1回来るの?」という話がありました。人によっては「メルカリはスマホシフトにうまく成功しただけだよ」と言いますよね。多分、これは今おっしゃっていることと同じことですよね?

 つまり、「HOW」の変革だけではなく、「WHAT」の変革があったんですよね?

高宮 そうなんです。それも実は、「兆しがあったよね」という話です。「WHAT」の変革でいうと、「ヤフオク」のような中古品を売買する市場は、PCでもガラケーでもあったわけで、「ヤフオク」は既に「巨大プラットフォーム化」してたわけですよね。

「メルカリ」は「何を新しい価値として提供したか」というと、まさに「フリマの価値」だと思っています。例えば、代々木公園でフリマがやっていたとして、掘り出し物をグルグルと周って探し、売り手の人と会話するのは楽しいですよね。

尾原 はい。楽しいですね。

高宮 つまり、ウインドーショッピング的に「回ること自体が楽しい」とか「コミュニケーションしていることが楽しい」というように、「フリマで買い物する体験が楽しい」という価値を提供しているというのが、まず一点目です。

 二点目は、先ほどのSDGs的な文脈なのですが、「もったいない」や「Spark Joy(こんまりさんのときめくモノだけを残すというメソッド)」の文脈です。

尾原 『人生がときめく片づけの魔法』の近藤麻理恵(こんまり)さんがそうですね。

高宮 初めに「メルカリ」の火が付いたのは、「子ども服」と「女性服」だったんですね。

尾原 最初はそうですよね。

高宮 たまたま、「子ども服」と「女性服」を売買するユーザーが、共通のユーザーさんだったんです。子ども服って当たり前なんですけど、サイズアウトするのが早くて。

尾原 そうですね。子どもが成長しちゃうと、2カ月後には着られなくなっちゃいますよね。

高宮 日本は子どもが少ないし、全人類が親バカなので、子どもにいい洋服を買っちゃうわけですよ。傷んで着られなくなる前に、サイズアウトしちゃうんですよ。そうすると「もったいない」という話になります。今までは、友達の一個下の子にあげていたのですが、「メルカリ」上で売れるようになり、ユーザーは「エコだよね」と感じるわけですね。

 それが、一時的にしか所有しないという「シェアリングエコノミー」的な発想や、すぐ「メルカリすればいい」という文脈にもなっていきました。

尾原 メルカリのユーザーは「モノを売る」というよりも、「もったいないを減らすこと」に価値を感じるということですね。ヤフオクは純粋に「高く売れれば」という、「もうかりたい」ということに価値を感じていましたね。

高宮 なぜウインドーショッピングで買い回るみたいな行動が促進されたかというと、経済インセンティブに支配された市場ではないから、相場観と比べて安く出品されているためです。

 つまり、「もったいないから売りたい」とか「大事に使ってくれる人を探したい」というインセンティブであって、売り上げを最大化したいということではないんですよね。だから、「相場より安い掘り出し物」がたくさんあるんです。

「もったいない」文脈で、売り手は次の人に渡ってくれればハッピーだし、買い手も安く買えるからハッピーです。つまり、「経済的な価値ではない」ところで、好循環になったことが二つ目です。

「巨大プラットフォーム」を倒した「メルカリ」

尾原 「メルカリ」は、「モノを売買する場所」というより、「自分のモノを大事に使ってくれる次の人を探す」というプロセスや、「何か掘り出し物がないかな?」とか「同じ世代の人がこんなモノを出しているんだ」というプロセスを楽しんでいますよね。

「Amazon」はクリックして買って終わりなのに、「メルカリ」のすごいところは、1人当たりのアクセス時間がもっと長いこと。30分とか1時間なんです。つまり、プロセスを楽しんでいますよね。

高宮 そうなんです。「Amazon」や「ヤフオク」って、僕は完全に「機能的価値・物理的価値」だと思っています。すべて「お金に換算できてしまう価値」に収束しているんですね。けれども、「メルカリ」は「体験」という「自分が感じる気持ちの価値」にひも付いています。

「規模のある経済価値ベースの巨人たち」がひっくり返しにこられない価値だったので、逆にいうと、「ヤフー」は「メルカリ」の台頭を許してしまったのだと思います。実は「すみ分けている感じ」ですよね。

尾原 一方で、「もったいない」を減らしたいという人たちが、「子ども服」から始めたことが、徐々に「自分の趣味のモノ」を出すようになってきたりとか、そうやって大切に扱ってくれるってユーザーがたくさん集まってくると、「自分たちの農作物を直接大切に食べてくれる人」に売りたいといって、農家の方が入ってきたりしていますね。

 まさにメルカリは、情熱を持ったユーザー同士で始まったものが、「Google」のような大きいプラットフォームに変わっていった好例だと思うんですよね。

高宮 「農作物」でいうと、僕は「メルカリ」で、めちゃくちゃ甘い安納芋とか買ったりするんですよね。売り手は大事に育てている農家さんなので、こうやったらおいしいですよという「メモ書き」が入っていたりするんです。

 売るページにはそのようなことは書いていないのに、手書きで「メモ書き」を商品と一緒に入れていたりするとホッコリして、それが「体験価値」として、さらに上がるということがあります。

>>(5)に続く