尾原 流通総額がですね。時間はかかるけど、伸び始めたらすごいですものね。

高宮 だから、「新しい価値、ユーザー習慣をゼロから創ろうとすると時間がかかるかな?」でも「山田進太郎だから時間さえ待てばなんとかなるかな」と。

尾原 「メルカリ」の山田進太郎さんは、一度成功した起業家だから「10年待てるんじゃないか」と。

高宮 そうやって人に対する圧倒的な信頼感で投資したんですけど、後付けて振り返ると「体験価値」のような話は、僕とか尾原さん世代だとはやっていたと思いますが、「mixi(ミクシィ)」の「mixiコミュニティ」上で、同じ趣味の仲間が集まって、リアルのオフ会で会って、そこで「モノの売買をする」というユーザー習慣が、既にあったんですね。

 そう思うと、同じ趣味の仲間とコミュニケーションすることの楽しみを感じて、それに付随した、たまたまの「マネタイズポイント」として、「モノの売買ってあるよね」ということだと思います。本当に鋭い人がそこを見ていれば読めたかもしれない。

尾原 そうですね。

高宮 「事業機会」を探そうとするときに、めちゃめちゃ力を入れて「新しい価値を発明するんだ!」という「無から何かを生み出す」という発想でやると、本当に「天才によって一瞬のひらめきと偶然で、天から降ってくる」みたいになり、めちゃくちゃ難しいんですよ。

 一方で、社会学やユーザービヘイビア(行動)的なところをよく見たときに、それを抽象化して、「この行動は何に価値を感じているのか」を考えてから、そこに対して現在あるソリューションは最適化されているのか?を深めると、新しいサービスのヒントが出てくると思います。例えば、「mixi」は、「SNS」でコミュニケーションに最適化がされていました。「モノの売買するプラットフォーム」ではなかったのに、ユーザー側が「工夫」をしてモノの売買をしていました。

尾原 ユーザー側が勝手に「工夫」をしてね。

高宮 そうですね。勝手に「工夫」をしてしまっているから「ユーザーは不便さを自覚していない」のですが、実はそういった「ビヘイビアに対して最適化」をすると、「mixiコミュニティ」をベースにした「オフ会での売買の形」ではなくて、「メルカリ」のような「フリマの形」を取った方が、売買としてはスムーズな体験になっていいのではないかということですね。

 後付けで思うと、めちゃくちゃ鋭い人だと、できたかもしれないと思うわけです。そういった形で「事業機会」を発想した方が、確率は上がるのではないかと思います。