「007シリーズ」25作目の新作「ノー・タイム・トゥ・ダイ」は当初2020年4月に公開される予定だったが、新型コロナ・パンデミックの影響で遅れに遅れ、イギリスではこの9月30日、日本では10月1日に公開されることになった。前作「007 スペクター」の公開が15年12月だったから、6年近く空いてしまった。主演のダニエル・クレイグは本作で降板するというので、クレイグ版「007」の最後の作品となる。59年間に及ぶ長い「007」の歴史をひもとき、初めて見る若いシネマ・ゴーアーのための基礎知識を提供しよう。(コラムニスト 坪井賢一)
第1作の邦題は「007は殺しの番号」
第2作の邦題は当初「007 危機一発」
「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」の公開が遅れている間に、初代ジェームズ・ボンド役のショーン・コネリーが2020年10月31日に90歳で亡くなった。第1作「007 ドクター・ノオ」の公開は1962年で、コネリーは32歳だった。黒い短髪、黒い瞳、ビジネススーツや黒蝶ネクタイのフォーマルウエアが似合うダンディなスパイの活劇は世界中で大ヒットした。
私は「007」シリーズを全部映画館で見ている。第1作「007 ドクター・ノオ」の公開時は小学3年生だったが、映画好きの叔母に連れられて、今はなき渋谷パンテオンで見た。当時の邦題は「007は殺しの番号」というなかなかしゃれたもので、「ゼロゼロセブンはころしのばんごう」と発音した。
その後、おそらく10年以上たってから原題「ドクター・ノオ」に戻されている。あまりにも長い間「ゼロゼロセブン」と発音していたため、現在も「ダブルオーセブン」と言えない人がかなりいるに違いない。
第2作の「007 ロシアより愛をこめて」(63年)も邦題は当初「007 危機一発」で、原題とまったく違う。やはり「ゼロゼロセブンききいっぱつ」と発音していた。「一髪」ではなく「一発」だった。小学生でもショーン・コネリーのカッコよさにしびれ、女優ダニエラ・ビアンキの美しさに驚いたものだ。