コロナ禍で成長スピードが加速したのが、エムスリーに代表される医療IT企業だ。中でも、市場や専門家が本命視するのが、医療ビッグデータで急拡大のJMDCである。もともとはオリンパスの子会社であり、ノーリツ鋼機による買収時の企業価値は20億円程度だったが、現在の時価総額は約4400億円。特集『目指せGAFA! メガベンチャー番付』(全10回)の#5では、JMDCの企業価値が200倍になった理由と、少子高齢化時代の医療ビッグデータの活用術を紹介する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
医療ビッグデータで大躍進のJMDC
企業価値は8年で200倍以上に
2013年、オリンパスは不祥事で窮地に陥っていた。苦境を乗り切るために子会社4社を売却。その中の1社が医療ビッグデータを扱うJMDC(当時は日本医療データセンター)だった──。
当時は買収したノーリツ鋼機も主力の現像機がテクノロジーチェンジで苦しい状況にあった。250億円程度のキャッシュを活用して、業態変革も考えながらM&Aを模索していた。
ノーリツ鋼機による買収時のJMDCの企業価値は20億円程度。それから8年経過したが、現在の時価総額は4397億円まで増加している。実に企業価値は200倍以上になった。
どうして同社は急成長を遂げたのか。その秘密は同社が蓄積してきた膨大な医療データにある。
もともとJMDCは英グラクソ・スミスクラインのセールスマーケティングのマネジャーだった木村真也氏が創業した。医療データが利活用されないことに危機感を覚え、紙でしか存在しなかったレセプト(診療報酬明細)を、医療機関と健康保険組合から集めてデータ化。ノーリツ鋼機に買収される時点で、レセプトデータでは国内ナンバーワンの地位を築いていた。
下表は医療機器・サービスセクターでアナリストランキング1位の大和証券の葭原友子氏が作成した、各業態別の市場の成長性と参入障壁の一覧だ。
近年、成長企業の代表格として注目されてきたエムスリーがけん引する製薬オンラインマーケティング支援以外で注目すべきはビッグデータ活用である。創薬やマーケティング向上に必要で、急速に市場が拡大しているのだ。
JMDCの前期実績は38%増収、67%営業増益。22年3月期は25%増収、16%営業増益を見込んでいるが、第1四半期も好発進しており、上ブレが狙える状況だ。
すでに株式市場では注目を集めているJMDC。PER(株価収益率)は150倍と高く、数年先までの20%営業増益を織り込んでいるが、死角はないのか。
医療費の増大や生活習慣病の増加は深刻な社会課題だけに、同社の役割は大きい。ビッグデータの活用術から、親会社との関係まで徹底取材した。